図書館の外の景色はどの季節も美しい。けれど、僕にとって一番感慨深いのは秋だ。それは恐らく、『彼ら』がこの図書館にやってきた季節であり、いったんは人が遠のいたこの図書館がまた賑やかになりだした季節でもあるからだろう。
 世間一般的には出会いと別れの季節は春であるが、僕からすれば少し違う。いや、昔はそうだったけれど、今の僕にとって、出会いの季節はすっかりと秋になってしまっていた。
 欧米では一般的、しかしながら日本にとってはまだまだ一般的ではないそれ。理由が異常な事態で急を要したからだということはわかっているけれど、それでもこの図書館にいる昔からの職員はざわついたものだった。それは、ただの事務員だった『僕』も同じだったけれども。
 今までの報告書なんかをまとめ上げてみて改めて思ったが、この一年、本当に様々なことがあった。彼ら特務司書と呼ばれる人たちは転生した文豪達と似たり寄ったりで不思議で独特な人たちが多く――また引き起こした事件もそれぞれ個性的だった。
 普通を模索する少女は半年もたっていないのに辞めるといって図書館を出て行ってしまうし、細な音色を奏でる好青年は文豪を巻き込んで兄妹喧嘩をする。フランスから侵蝕された手紙が来たと思ったら館長抜きに彼らだけで潜書してみせ――神話さながらに神隠しを拒んだ少女を連れ戻しに行った事件もあった。
 そして、一番の重大な事件は紛れもなく嘘がつけない道化師の事件だろう。まさか、あんなことになるなんて一年前の僕が聞いたらどう思うだろうか。恐らく冗談だと笑い飛ばすか、きっと館長補佐になることを拒んでいたに違いない。なぜなら、僕は特務司書達のように何か取り柄がある人間ではなく、それこそ立川さんが望んでいたようなそこらにいる人間と変わらないからだ。まぁ、一年前に比べて、度胸はついたかもしれないが。ソレも彼らの成長と比べればほんの少しだけだろう。本当に彼らはたくましくなったと思う。もちろん、良い意味で。
 もうじき彼らの就任一年を迎える図書館であるが、最近は特務司書の彼らや文豪だけでなく僕や館長もバタバタと忙しなかった。国に特務司書達の実績が認められ、正式に独立した機関として認められたのである。これにより、国定図書館私立図書館問わず、侵蝕されたと思われる本や書類は全てこの図書館に集められるような仕組みになるらしい。そのため、彼らの仕事が増える見込みである。まぁ仕事が増えたのは彼らだけでなく、館長や僕もそうだ。館長には各図書館の視察、僕には進捗監視と振り分けという仕事が増えてしまった。僕の仕事も一部の文豪が手伝ってくれるらしいけれど、先行きは不安である。
 そして、忙しないのは特務司書に関わっている僕らだけではない。一般職員もまた、最近は忙しなくしている。なぜならもうすぐこの図書館は通常の図書館と同じように貸し出しなどの機能が復帰するからだ。そう、一般利用客がもっと来るようになるのだ。といっても、図書館の一部だけを解放するだけだけれど。それでも職員達は嬉しそうにせっせと準備をしたり、特務司書や文豪達に業務のやり方を教えたりするのだ。
 ――まぁ、忙しくなると館長が睨んだ結果、図書館にも人員の補充がされるらしい。どんな人かは僕はまだ知らないが、なぜか知っている按司くん曰く――。
「館長が連れてくるのは子供みたいな容姿の奴ら、蓮子が連れてきたのはオレ達より年上」
「何で知ってるの」
 按司くんの言葉に立川さんが「どうして知ってるの」と複雑そうな顔をした。

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