部屋にあった化粧品は快くあのメッシュが入った男性――エフさんが引き取ってくれた。これとこれとこれはつけておきなさいと力説されたものは部屋に置いているが。服は明日ファルさんかエフさんが買い物に連れて行ってくれるそうだ。有り難い。特にやることもないんだよな、と本棚に並ぶ本を眺める。89さんはソファに寝転んでゲームをしているが、たまに私に視線を向けるので仕事はきちんとしているのだろう。

「あの人にちかづかねぇほうがいいぞ」
「あの人? ファルさんですか? エフさんですか?」
「あの二人はノーコメント。ちょっと太ったおっさんだよ」

 その言葉にああ、と理解する。

「あの時ザライと呼ばれていた?」
「あぁ、そいつだ。あの人、権力にも女にもがめついからな。右目を見られたらどうなることか」
「部屋に閉じこもるのが吉ですか」
「この部屋はあのおっさんが連れてきた女が寝る部屋、本来なら俺らは出禁。あの方達の命令があるから俺は入ってるだけだし、他の兵士も寄りつかねぇ」

 どうりでそういうものが多いのだろう。適当に本を数冊手に取り彼を見下ろす。まじまじ見ていれば眉間にシワを寄せられた。

「なんだよ」
「いえ、貴方達も薔薇の花があるのかと」
「ねぇよ」

 そう断った彼に「俺たちは人間じゃねぇからな」と淡々と返される。その意味がわからなくて首を傾げたが、じきにわかるだろ、という返答である。どういう意味だろうか。

「アンタはもうここから逃げ出せねぇぞ」
「それは……」

 知ってる。そう笑って窓の外を見る。赤い花が風に揺れた。


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mokuji