連れてきてもらった街は賑わっていた。恐らく物資が行き届いているからだろう。それでもちらほらと物乞いのような人がいるのだから、地方は恐らくもっと物乞いや貧しい人がいるに違いない。ガスマスクをつけたファルさんが隣を歩いて行くからか自然と道が開くのを見ると、恐らくは彼は偉い立場だとわかる。馴染みなのかブティックの店を開けた彼に店員はお待ちしておりました、と告げる。

「彼女に合う服を二、三着。ドレスを一着、頼んでいた服を」
「ドレス?」
「今後、必要ですので」

 かしこまりました、といった彼に手を引かれる。採寸のちにスカートとズボンどちらにしましょうか、という言葉が来たのでズボンと即答すれば服を出してくれる。何着か試着して店の奥から出れば店員がもう包みはじめていた。壁にもたれて待っていたのだろう彼に近寄る。

「お待たせしました。会計は」
「貴方が気にすることではありませんよ。さて、帰りましょうか。荷物は後で届くでしょう」

 そう告げた彼に続いて店を出る。一応出る際に頭を下げれば店員が肩を跳ねさせた。

「貴女は本当にわがままが少なくて助かります。シキノさんはいい子ですね」

 頭を撫でた彼に、子供扱いだな、と思いつつ彼を見上げた。クスクスと可笑しそうに笑った彼は「貴方は一年間入院していたと聞きましたが」と紡ぐ。

「体が弱いんですか?」
「いいえ、事故に巻き込まれただけです」
「事故?」
「飛び降りた人の下にたまたま私がいたようで。一年近く意識がなかったみたいですね……でも、そこからです」

 一年。あの世界にいたのはそんな短い時間ではない。けれど、この世界の時間はそんな短い時間だった。

「たまにいるでしょう? 頭を打って、性格が変わる人」

 そう彼を見上げれば彼は「話は聞きますね」とだけ告げた。


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mokuji