この人は、似ている気がする。違う部分ももちろんある。だけれども、動き方や考え方が、とても。彼が年を重ねればこうなったのではないか、と思ってしまうくらいであるが、些細な仕草が違う。

「ハルは何が好きだ?」

 そう尋ねた皇帝に、何だろうかと頭を悩ます。恐らくは本は好きだ。静かな場所で本を読むのは至福だろう。体を動かすことも好きに入るだろうか。

「あまり好きなことは少ないのか?」
「いえ、あまり浮かばなくて」
「本は好きか?」
「ええ、まあ。好きでしょうか。あまりスパイ小説は好きではないですが」
「映画は?」
「映画は普通です。あまり見ませんが。一番の友人が私が好きなジャンルの映画があまり好きではなかったようなので」
「音楽」
「嫌いではありません」
「花はどうだ?」
「花は」

 そう呟いて窓の外をみる。赤い花が風に揺れている。

「オオアマナが好きです」
「オオアマナ?」
「真っ白な花です。一輪でも綺麗ですが――」

 記憶の中で白い花が揺れる。

「花畑になると、とても」

 そう言って彼に視線を向ける。彼は目を見開いて私を見た。小さく呟かれた言葉は消える。彼は震えるような声で口を開いた。

「君には、それは、似合わない」
「陛下?」
「君は――貴女は、何故、いや、これは、あの人は、あいつらは」

 混乱したような彼に、陛下、ともう一度呼べば彼は震える手で私に触れた。

「あり得ない、あり得ないんだ、あるとすれば俺と同じだ。あの国がどこでそんなことが……」
「陛下? どうされたんですか」
「――ハル、お前には別人の記憶があるか?」

 その言葉に首をかしげる。別人の記憶とは。彼は私の様子を見て大きく息を吐いた。いや、いいんだ、忘れてくれ。小さくぼやいた彼は私の手を取って顔を伏せる。

「悪い、少しだけ、こうしてくれ」

 彼の様子がいつかのジャックと重なる。そっと遠慮がちに彼の髪をすけば、彼はゆっくりと私を見た。

「あまりご無理をしないように」
「……あぁ、そうだな」


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mokuji