貴女が好きだとお聞きしたので。
朝目覚めると自室の窓の外が真っ白な花畑に変わっていた。何だ、と思っていれば私の周辺の警備をしている兵士達の仕業らしかった。貴女が喜ぶと思って、と告げた彼らにありがとうございますと笑えば彼らは悪戯が成功した子供のように笑った。
あれから一年が経とうとしている。たったの一年。されども一年である。私の命は繋いだままである。ザイルと呼ばれたあの男もまた命を繋いだままであるし、未だに私の命を狙っているのだろう。しかしながら私のそばにいつも誰かしらいるので隙が無いのかもしれかいし、あの男の命令を誰も聞かなくなったからかもしれない。
真っ白な世界に足を踏み出す。花をできるだけ踏まないように歩き花をみる。そういえば今日のお守りは誰だったかと部屋の方を見ればアインスさんが来ていた。こちらに来るなり周りを見渡した彼は「どうしたんだ」と私に尋ねる。
「兵士の方が私の為にしてくれました」
「なんていう花だ?」
「オオアマナです」
「赤色はないのか」
「ないですね、残念ながら。ホクサイなら作ってくれるかもしれませんね」
「頼むほどのもんじゃない」
手招いた彼に続きそちらに向かう。風に揺れたオオアマナはあの時のように花びらを散らした。
「ハルにも、赤の方が似合うと思うんだがな」
「いずれは染まりますよ」
「それはねぇ」
彼は赤い花を私の髪につける。今朝咲いたんだ、と言った彼にでは見に行くかと花畑に足を進めた。
「あひゃひゃ、マスターみっけ」
建物の廊下を進んでいれば、角からかけてきたのはベルガーである。砂埃まみれのそれに、ああ確かあの男の命令で任務に行っていたなと思い出す。怪我は特にない。彼が人でないからなのか、彼が強いからなのか。抱きついてきた彼に仕方ないなと頭を撫でる。身長は変わらないというのに、まぁ。
「おかえり」
「うーす! 今回も楽勝だったぜ! アインスもチーッス! チーッス!」
「ベルガー、言葉遣い」
「いや、構わねぇさ。ベルガーが帰ってきたということは……」
「おいこらベルガー!!! お前何一人先に消えてんだよ!! 報告あるだろうが!!」
足音を粗く鳴らしてやってきたのは89である。私とアインス、ベルガーを見つけた彼は「お前っ」と呟いてやってくる。
「俺のマスターはアイツじゃねぇし、アイツへの報告はお前だけでいいじゃん」
「はぁ!? あのなぁ!!」
「ベルガー、報告してきなさい。報告が終わったら約束どおり出かけようか」
「! マジで!!」
「マジで」
「行ってくる!!」
手のひらをくるりと返して彼はきた道を遡る。アインスが仕方のねぇ奴だ、と少し笑いながら見送った。あぁ、もう! と怒った89に、眉尻を下げる。
「おかえりなさい、89。貴方には迷惑をかけるばかりで、すいません」
「い、や、別に、ハルに謝られることじゃねぇし……っておいこら、待て、ベルガー!! お前の報告はどうせ支離滅裂だろうが!」
そう追いかけた89を見送る。やはり彼は面倒見がいい。入れ違うように現れたのはミカエルとエフだ。
「マスター、アインスさん」
「あら、お兄様とハルじゃない!」
「入れ違いか」
「あぁ、あの二人も仕事だったのね。マスター大好きなベルガーちゃんが先にハルのとこに来たって感じかしら」
「その通りだな」
「その点、ミカちゃんは偉いわよね。きちんと報告まで付き合ってくれるんだもの」
「それは当たり前では……」
「まぁ、当たり前なんですけどね」
私の返答に彼らもまた苦笑いをする。どこかにいくのですか? あぁ、今から花壇へ行こうと。あら、可愛い花飾りじゃない。アインスさんをにいただきました。そんな会話をしていれば、「あぁ、いましたね」とファルがやってくる。
「あの人が出かけるので、貴女もついてくるようにということです」
その言葉に誰が? と惚けてみれば、ファルは「ハルに決まっているでしょう」とため息混じりに告げた。
「きゅるちゅは?」
「今朝方ホクサイと作戦に行きました」
「あら、参ったわね。いつもきゅるちゅがあの人におねだりしてついていってたでしょう?」
「僕たちはついて行ってはいけないのかい?」
「跡をつけるくらいならいいと思うが、堂々とはあの人が拒む」
「ゴーストも人について任務に行ったしな……」
少し考えて、まぁ大丈夫か、と息を吐いた。
「恐らくあの人はレジスタンスの狙いを私にしたいだけだろうし、適当な理由をつけて男のそばを離れるかな……」
そう言えば周りの視線が私に向いた。それをすました顔で無反応でいることにする。しかしながらそれは事実だろう。
「……あの人の護衛という形で聞いてみるか」
ため息混じりにそう告げた彼らに人よりもお人好しだな、と彼らを見上げた。
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