世界とは統一されるべきではない。そのままであるべきものだとはボスの言葉である。しかしながら、全ての人間の意思を統一するなど、不可能なのである。言語も体も意思も心も違うものを統一するなど。数年は持つかもしれないが、時間が経つにつれそれはほつれていくのだ。
 空虚――全ての民族・国家の統率というプログラムにそって動いていた『愛国者達』に支配されたこの国は、終わるべくして作られたこの国は、だれかの英雄譚の下敷きになる。この国が積み上げた「嫌悪」は膨らみ、もうじき終わりを迎える。嫌悪を膨らませたのは陛下でも将軍でも私でも統制された『空虚』でもない。選ばれたのだと驕り高ぶった貴族の行い、そして繰り返される反乱分子の弾圧だろう。

「そもそも、どうしてファルは私を連れてきたんだ?」

 そう首を傾げて彼に問う。静まり返ったその空間で彼は私を見上げた。いや、彼らはだろうか。今更ですか、と言った彼に今気になったからと言う。

「偶然の産物だろうと今まではあまり気にしなかった。偶々私が貴方より先にあの米軍基地に向かっていて、偶々貴方もそこに用があったからと」
「貴方に興味があったからだと言ったらどうします?」
「なんで興味を引かれるかがわからないな……」
「貴方には色んな噂がありましたからね。なによりも、あの狂気にも似た集団で貴方が一番正しい反応をしていたことが一番気にかかりまして」
「キョーキ?」
「私がいた国は平和だと思い込んでいた。いや、政府が思い込ませていた。恐らくあの国の国民は火の海になって初めて平和でないことに気づいただろう」
「貴女は違った」
「同盟を組んだ他の国が撤退したのに違和感がしていた。あれはあの国からの撤退じゃなく、恐らくは総出撃だと踏んだまでだ。それを確認したくてあの日はあそこに向かった。でも、先生は違うでしょう?」
「私は先生でしたからね、誰がどこへ向かうかは把握する必要があったんですよ。元より貴方だけが他の人とは大きく外れてましたから」
「逆に何かあると思った?」
「……まぁ、空振りに終わりましたけどね」

 肩をすくめた彼に、そう言えばマスターは制服をきた女の子だったものね、とエフが告げた。きゅるちゅがつまらなそうに口を開く。

「あの時はマスター美味しい思い出を持ってると思ったのになぁ」
「あんまり思い入れがなかった。学校も、家族も。昔は仲が良かったんだが、どうもこういう性格になってから線を引かれてね。両親は特に。まぁ、彼らは海外へ行っていたから巻き込まれてはいないだろうけど」

 さて、と小さく息を吐く。もうじきレジスタンスがここに来るだろう。陛下の守りは堅いだろうが、向こうもまた攻め込まれるだろう。私が死んだことによって。
 大丈夫だ、と言い聞かせて扉を見つめる。ただたんに、あのときと――あの夢と同じことをすればいい。悲鳴、怒号、そんなものが近いてくる。

「逃げるならいまだぞ」
「マスターを置いて逃げるバカはいないがな」

 アインスがそう言って銃をかついだ。


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mokuji