彼について外に出れば、風に乗って焼け焦げたような臭いが漂ってきた。そして、理解する。恐らく彼はもとよりここで合流するつもりだったのだろう。私についてきた、というより、私が彼のいく先に先回りしてしまったのだ。
軍用ヘリが上から降りてきて――兵士達がワラワラと降りてきた。彼に向かって敬礼をした兵士達は私を見ると銃を向けたが、彼が私の前に立ったことで彼らはそれをやめる。連れて帰りますので、と英語で告げた彼に、ガスマスクをつけた兵士達は私と彼を見比べた。
彼に手招かれてヘリに乗る。運が良かったな、と呟いた兵士になにも返さず見えてきた地獄絵図を見下ろす。
――あぁ、あの街に似ている。あの、逃げ回った街に。嫌悪を名乗るあの人に助けられたあの街に、とてもよく似ている。
入れ違うように別の街に戦闘機が向かっていく。ああこの国はこれから、たった1日、いや、半日で覆されるのだ。圧倒的な力によって。ぽん、と講師が頭を撫でる。
「よく見ておきなさい、これが貴女の国の最後だ」
愉悦を含んだその言葉に私は街をただただ眺めた。
ヘリから飛行機に乗り継ぐころには、人が増えた。正しくは人が増えたというよりは迎えの飛行機に人が乗っていたのだろう。長い間ご苦労、と講師に告げた小太りの男が私を見下ろした。それに伴い、彼の後ろにひかえている男達の視線も向くことになる。皆一様にガスマスクをつけている姿は歪だった。
「ファル、コイツは」
英語で尋ねた男に講師は笑みを浮かべて答える。
「欲しいとおっしゃっていたでしょう? 日本人の女。彼女はこう見えて18ですよ」
「やはりアジア系は他の国より幼く見えるな」
そう私を見た彼は私の顔を掴む。少しの反抗心を見せて見れば、生意気な面だ、と彼は下品な笑みを向けた。
「調教しがいがある。いいぞ、連れて行け」
わたしから手を離した男は背を向けて歩いていく。チラリと講師を見れば彼は渡されたガスマスクをつけていた。
03
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