たどり着いたのはホワイトハウスに似た場所だろうか。そこにあの男がやってきて、私を誰かに合わせると言って私だけを引き連れて行く。謁見室のような場所である。玉座に座っているのは壮年の男だ。自分の手柄のように全てを報告する小太りの男の声を聞きつつ、私はその先にいる男を見た。男がちらりと私を見下ろす。

「それで、そいつがお前の今回のお気に入りか」
「いえ、正しくはファルが拾ったものです。擬態して潜り込んだからか情が湧いたのかはわかりませんが。どうせすぐに飽きる」

 小太りの男はそういってまた私を見た。カツン、と革靴がなる。カツン、カツン、と音を鳴らして壮年の男は私を見下ろした。

「お前の名前は?」
「……シキノです。ハル・シキノ」
「そうか。遠路はるばるご苦労、ハル。疲れただろう、部屋で休めばいい」

 くしゃりと彼は私の頭を撫でる。空いている部屋に連れて行け、という声に近くにいた兵士が私の前に立ち――連れ出した。
 通されたのは広い部屋だ。前にも誰か住んでいたのだろう。あまり自分の好みではない、女性らしい彩の部屋である。私をここまで連れてきた兵士は可哀想にと呟いた。この部屋についた人の末路を私は知らない。いや兵士達の同情の視線や交わされる会話を聞けばわかる。飽きられたら殺されるのだろう。とりあえずベッドに座り、窓から外を見た。この部屋に通じるテラスの先では赤い花が揺れている。

 ――一面の花畑。
 そっと目を閉じればジャックが私を見下ろしている。

 不意にノックの音がして目を開けば、ガスマスクをつけた人がいた。あら、起こしちゃったかしら、と告げた彼、もしくは彼女は私に近づいた。

「いえ、ただ寝転んでいただけですから」
「そう、よかったわ。今日は貴女の歓迎晩餐会よ。ドレスを選ばなきゃね。ここにあるのを好きに選んでいいわ、と言いたいけれど、貴女にあうサイズが、ねぇ」

 クローゼットを開けた彼はああでもないこうでもないと服を選ぶ。買いに行くしかないかしら、と悩んだ彼に「何してるんですか」と先生の声がした。

「あら、ファルちゃん。何ってこのお嬢様がおめかしに無関心そうだからお洋服を選んであげてるのよ」
「ここにあるのは全て大きいでしょう」

 そう彼は1着のドレスを差し出す。あら、アインスお兄様の色ね、といった彼に首を傾げれば彼もしくは彼女は私を見下ろした。

「ほら、一番大柄だったお兄様よ」
「あぁ、ドイツ系の」
「……ドイツ?」
「あれ違いました? 言葉が少しドイツ系の人っぽいなって思ったんですけど」

 自分が呟いた言葉が発端なのでそう首を傾げてみる。二人は顔を見合わせた。違うのだろうか、と思えば彼らはクスクスわらった。

「そうかもしれないわね」
「いやはや、貴女はやはり耳がいい。エスコートはアインスがしてくれるでしょう。テーブルマナーは?」
「自信がありませんが」
「そのまま頑張るしかありませんね」

 そうドレスを私に渡した講師だった人はあとはお願いしますよ、とそばにいた人に告げる。わかったわ、と告げた彼は私を見下ろした。

「最後の晩餐にならないように気をつけなくちゃね」

05

mokuji