ここにはあるとあらゆるものがある。正しくはあるとあらゆる兵器がある。すべての国の軍から押収したそれらはあの三人の将により分類され、配備されている。周りに皇帝と呼ばれる男に連れてこられた先にあったのは厳重に保管された何かである。黒い布を退けたその先には青い宝石のようなものがあった。

「これは?」
「さぁな、私にもわからない。だが、これを手にしたものは不思議な力を得る」
「不思議な力?」

 訝しげに彼を見上げる。彼もまたこちらを見下ろした。

「ある意味の選別だ」

 そう言って彼は革手袋をはめた手でその青い宝石を私の掌に載せた。宝石から反射した光が手に荊のようなものを描く。それを認識した瞬間、激痛が走った。

「落とすな」

 ただその声に石を握る。声を出さないのは癖だろう。掌のようなものに描かれた荊のようなものが蔓を伸ばす。膝をつく。痛みは蔓に沿って徐々に上がり――そしてそれが目に達した瞬間、燃えるような痛みへと変わった。しかし、それを感じたのは一瞬である。小さな悲鳴をあげたと同時に次に襲ったのは誰かの悲鳴だ。駆け抜けるように遠のいたそれに目の前の男の服を握る。荒い息で彼を見上げれば、彼は穏やかに私を見下ろした。

「やはり耐えたか」

 そう私の目線に合わせて屈んだ彼は私の頬に手を触れる。

「右目か。新しいな。今までは四肢の何処かだったが。眼帯を用意しよう。今はこれで我慢してくれ」

 彼はそう言ってポケットから白い布を取り出し、私の目にあてがうようにして簡易的な眼帯を作り上げる。私は片方の目で掌に閉じ込めた宝石を見た。掌に伸びていた荊はない。幻覚だったんだろうか。それにしてはあの痛みは。
 彼は宝石を私から取り上げるとその宝石をまたその台座に戻した。抱き上げようとした彼に、立てる、と呟くように告げて無理やり立つ。幾分かフラついたが大丈夫だろう。気丈なやつだな、と笑った彼は私を手招いた。

「君の処遇は考えるとしよう。とりあえず、今は休め。何かあればファルやアインス――君が先生と呼んだ男と君をエスコートした男を頼ればいい……噂をすればきたな」

 そう廊下をみた先には講師と先程の男がいる。皇帝と呼ばれる彼に一礼した彼らに彼は私の背を押した。

「部屋に案内してやってくれ」
「かしこまりました」
「では、また明日、ハル」

 少しの笑みを浮かべた彼は、誰かに似ている気がする。はい、とただ返して頭を下げた。コツコツと足音を立てて廊下を行く彼を見送る。彼が曲がり角に消えたのをみて二人が寄ってきた。

「生きていたようだな」
「……物騒ですね」
「青い宝石に触れたでしょう? あれを持った人間は二種類に分かれるんですよ。触れてもなお息をしているか、息絶えているか。あまりの激痛にショック死する人間が殆どです。指先を触れただけなのに」

「待ってください、指先を触れただけ……?」

 怪訝そうに私が二人を見れば二人は顔を見合わせた。

「あぁ、なんだ、有無を言わさず掌に載せられましたか。貴女は宝石に興味がなさそうですもんね。と、いうことは、荊ではなく」
「薔薇の花か……右目を隠してるな、それか?」
「おっしゃっている意味がよくわかりません」
「眼帯を外しても?」
「別にいいですが」

 私の返答に男がそっと眼帯を外す。こちらの目を覗き込んだ彼らに何だろうかと首を傾げた。

「……瞳の中は初めて見るな。あの方達は四肢だろう」
「えぇ、そうですね」
「今日は休んだほうがいい。部屋まで案内する。歩けるか?」

 男の問いによくわからないままはいと答える。そのまま廊下を進み――最初に通された部屋についた頃には12時を回っていた。


07

mokuji