「そろそろ私には迎えに行かないといけない人がいる」
ハルはそう言って、その白にそまりつつある世界を見つめる。墓地だ。白い花がさく。彼女はそんな中で「もうすぐで迎えに行かないといけないけれど、今は何処にその人がいるのかわからないから、もう少しだけスネークと一緒にいる」と告げた。その意味がわからなくて彼女に問いかける。
「誰を?」
「秘密」
「……そいつを迎えにいってどうするんだ」
そんな問いに彼女はただ微笑んで、一緒に行くだけだ、と告げた。彼女の裾から花びらがこぼれ落ちる。そのまま彼女が消えてしまう気がして、手を伸ばす。その手から崩れ落ちるように彼女は花びらになって消えた。なすすべなく見つめる。体が揺すられる感覚がする。彼女を探して声を荒げる。いくら彼女の名前を呼んでも彼女は現れない。
不意に、視界が暗くなり――目を開く。ハルが少し困惑した顔をして見下ろしていた。恐らく彼女が揺すったんだろう。
「ついたか?」
「いや、もうすぐ……本当に大丈夫なのか?」
「あぁ、心配いらない」
起き上がる気にもならず、彼女を見上げる。まぁ、彼女の頬を触るまえに手は止められてしまったが。まだ夢見心地、と眉間に皺を寄せた彼女は俺のバンダナ越しにデコピンをする。地味にいたいが、CQCで締められるよりはマシだろう。
――あれは夢であって、夢じゃない。彼女は確かに現実世界で自分にああ言った。誰かを迎えに行くのだと。しかし、あの夢とは違いハルは現にここにいる。でも、彼女はその誰かを迎えに行ったが最後、いなくなってしまうのだろう。俺たちの前から。俺の前から。
――オオアマナの亡霊。あの墓場に咲き誇る花の亡霊。彼女がもし、この世に実態を持たないゴーストなら。もし、自分を迎えに来た使いなら。
「――もう少し待ってくれないか」
まだやることはある。一緒に行くことはまだできない。俺の言葉に彼女は不思議そうな顔で俺を見た。
「何を?」
「いいや、なんでもない」
そう目を伏せて、首を振る。寝ちゃだめだ、と、彼女に釘を刺されてしまったが。
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