発作が起こったビッグボスを支える。彼女をみれば、彼女は立ち上がってこちらを見ていた。何とか彼女の元にたどり着けば、彼女はまた微笑んだのだけど。彼女にもたれてみせたビッグボス はそっと彼女の顔を撫でる。それはそれは愛おしそうに。
「本当は、」
「うん、」
「本当は、お前と生きたかったんだ。その未来を塗り潰したのは間違いなく俺だ。お前を恨むなんて見当違いだとは、わかっていたんだ」
「見当違いじゃない、憎んで良いよ。全部私のせいだ」
 ――ビッグボスの話。それは一つの任務で、一人の女性を撃ち殺したことから始まったゆがみの話。彼女曰く――彼女の母親であるはずの人物の話。しかし、ビッグボス曰く、彼女自身の話。どちらが正しいのかは俺にはわからない。いや、普通に考えると彼女の母親の話というほうが正しい。しかし、彼女の記憶を混合させたような話し方は?愛国者に関わったオセロットとビッグママが告げた言葉は?彼女の謝罪は? それを全て考えると、ビッグボスの話が正しいと思ってしまう。まるで夢のような話ではあるが。
 ビッグボスは子供が拗ねたような顔で彼女を見る。
「……いままでどこに、いたんだ?」
「――秘密」
「――俺が死んでもいなかったくせに」
「まだ早いと思ったからだ。だから、今、迎えに来た」
 彼女はそう言って、ビッグボスの手を握る。ビッグボスはそれに首を左右に振った。
「ハルはこなくていい。デイヴィッドを、たのむ」
「――それは嫌がらせかな?」
「あぁ、嫌がらせ、だ。今度は君が呪いにかかる番だ」
 そう言ってビッグボス が穏やかな顔で笑った。彼女もまた穏やかに笑う。しかし、目からは水滴が落ち、ビッグボスの頬をぬらした。
「――まるで逆だな」
「そうだね。おやすみなさい、ジャック」
「ああ、」
 ビッグボスはそう言ってゆっくりと彼女の涙を拭った。
「――ほんとうに、きみを、あいしていたんだ」
 強い風が吹く。あまりの強さに目を瞑る。しばらくすると収まった風は、花びらを巻き上げ――散らしていく。あの夢のような光景の中、彼女は小さく、いいものだな、と呟く声が聞こえた。

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mokuji