奇術師は指揮棒を誰に託すか(終)

 
「観光してたぁ?」
 団探偵学校である。彼らを送り届けにやってきたのだが、一番に七海にあってしまい――声を荒げられてしまった。私と言えば、相変わらず猫をかぶりながら、事件は起こる前に解決したから手続き終わらせても三日残ってしまって、と手帳で口元を隠す。というか、そもそも報告はしたはずである、と思ったが紫乃ちゃん経由で団先生と探偵、明智警視にしか連絡してなかったかもしれない。
「七海さんにも連絡してませんでしたっけ?」
「してない! お前なぁ、心配したんだぞ!」
「ひぇっ。紫乃さんに聞いてないんです? まぁ、生徒さん達ですもんね」
 猫をかぶりながらそう告げる。七海は大きくため息をついた。ちなみにQクラスは北海道観光が楽しかったのかほくほく顔である。まぁ、途中で色々謎解きクイズとかだしたし。大きなため息をついた七海はおいておいて、近づいてきたメグちゃん達は困り顔で首をかしげた。
「でも、環先生、お金大丈夫なんですか?」
「お金は著作の関係で腐るほどあるので……」
「お金?」
「なんやかんやあってお金を貸すことになったので。別に戻ってこなくても良いとは思っているのですが」
「あー、環先生の印税は基本そのままおいてるんだっけか」
「ないものとして考えてますからね」
「環先生は副業をされてるんですか?」
「ええ、まあ」
 困ったように笑う。
「おかえり、Qクラスの諸君」
 背後から聞こえてきた声に七海と振り返れば団先生と紫乃ちゃんがいた。
「団先生!」
「依頼達成ご苦労」
「残り三日は遊んでたらしいですけどね!」
 そう言った七海に私は肩をすくめる。団先生は「おや」と目を瞬いた。
「私は近宮くんの特別授業を受けていたと聞いているが」
「近宮?」
「観光しながら謎解きクイズをしていたので、授業と言えば授業でしょう」
 猫をもうかぶる必要もないかと、腰に手を当てて告げる。手帳をポケットの中に滑り込ませた。え?と顔を見合わせたQクラスが可愛らしいためクスクス笑う。特殊メイクをとり、カラーコンタクトを取る。ふう、と息を吐いて髪を何時ものように結う。
「環ナマエ、改め近宮ナマエと申します。DDCの探偵及びDDSの教員です」
 それだけの発言だというのに彼らは「ええっ!?」と声を上げる。相変わらず面白い反応にクスクス笑ってしまった。
「じゃあ、小説家の環ナマエだって言う話は嘘!?」
「いや、それは本当だぞ。彼女は紛れもなく環ナマエ本人だ」
 団先生がカラカラ笑いながら告げた。
「さて、近宮君からの報告はメールで受けいるが、君たちからの報告はまだだったな」
 その言葉に彼らはぴしりとたたずまいをなおす。ならば私はもういらないだろうと団先生を見た。
「ああ、近宮くんはお疲れのところ悪いが警察が君をお呼びだ」
「明智警視でしょうか。まぁ、今回はお世話になったので仕方ありません。少し行ってきます」
「ああ、頼んだよ」
 団先生の言葉に私はうなずいてひらりとQクラスに手をふっておいた。
「それでは少年少女諸君、グッドラック」
「あ、おい!」
 そう呼び止めた七海に私は振り返って彼を見る。
「おや、七海はついてきてくれないんですか?」
「仕方ねえなぁ。これで貸し二つだからな!」
「無限にある君の貸しのうちの二つがやっと返ってきましたね」
 そうクスクス笑えば、うるさい!と軽くヘッドロックをくらう。笑いながらぽんぽんと彼の腕を叩くが彼が離す様子はない。
「――大丈夫なのか?」
 不意に振ってきた言葉に私は七海を見上げる。それにやっぱり紫乃ちゃんから報告を聞いていたんじゃないかと思う。恐らく彼は桐江さんの境遇が私と似ている事を気にかけていたのだろう。私はそれに笑って答える。
「――大丈夫だよ」
 本当に彼は心配性だと思うのだ。

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