小説家は模造品を評価するか(6)
――恐らく、である。夜中に先生は誰かと会っている。それも、その誰かは玄関ではなく窓から中に入っているのだろう。少年はそう思って、小説家に問いかける。先生は夜中に誰と会っているのですか?と。小説家はその問いに口を開く。夜目が効かないというのに、昔馴染みが会いに来るんですよ、と。
案内状に従ってやってきたのは新しく建てられたのだろう綺麗なホテルだった。ただ、難点は山の麓にあり――陸の孤島となり得る場所というところである。この時点で嫌な予感は加速していたが――中に入ってみれば意外と人がいることに気づいた。しかしながら、受付と書かれた場所で結構な人が弾かれているようである。
「なるほど、ここから成り切れということでしょうか」
私のつぶやきに、賢一くんは納得したらしい。とりあえず私はQクラスを率いて受付に向かう。お名前は?と尋ねた人物に、「高宮と申します」と告げる。
「高宮……様ですか?」
「フルネームの方がよろしいですか?高宮一葉。職業は小説家」
「……高宮先生が家から出るとは珍しい」
「嫌だなぁ、『私』だって家から出たくないですよ。子供達に引率を頼まれてしまったんです」
そう言ってQクラスを見る。受付にいた人達がQクラスを見た。真っ先にリュウくんが口を開く。
「先生だって楽しみにされてましたよね?」
「そうですよ!先生!俺が話した時面白そうですねって言ってたじゃないですか!」
「ちょっと……うるさいよ。他の人に見られてるでしょ」
「メル姉の言う通りだよ」
「まぁまぁ、元はと言えば先生があんなことを言うからだろ」
うーむ、次第点だろうか。しかし、受付の人達は顔を見合わせて満足そうに彼らを見る。
「君たちの名前は?」
「俺は『津田ケイスケ』です!先生の助手です!」
「あ、啓介、それは抜け駆けだ。あーと、柊フユトです。同じく先生の助手を」
「僕は『東風メル』。こっちが弟の――」
「『東風ナル』です」
「俺は先生の弟子の立山コウタっす!」
「弟子ー!?ずるいー!」
クスクスと笑いながら賢一くんがやってくる。随分賑やかですね、と告げた彼に私は口を開く。
「……すいません、騒がしくて。車中でも煩かったでしょう?」
「いえ?賑やかでいいと思います。構いませんよ」
「貴方は?」
「『大鷹大翔』」
そう口角だけあげた彼に受付はざわついた。まぁそんな騒めきに彼は首を傾げたが。
「――僕の名前に何か?」
「い、いえ、皆さまはどうぞこちらを」
そう渡されたのは三つの部屋のキーと人数分のバッヂだ。荷物を部屋に置いてこれをつけて二階の会場に行けということだ。それにしても――何にざわついたのか。彼の雰囲気があまりに合致していたからか、それとも――。