小説家は模造品を評価するか(7)
「わぁ、半ばコスプレパーティー」
パーティー会場に入るなりそう口を開く。賢一くんが「先生」と笑いながら告げたが。キュウくんと言えば大興奮中であり、誰が誰だとかわからないキンタくんに説明していく。近くにいた白衣を着た青年がこちらを凝視した。
「……子供が五人の新入り……まさか最新の放課後事件ノートの少年探偵団か!探偵は探偵だし、いいとこついてんなぁ……」
「そういう貴方は監察医シリーズの『飯塚ヤマト』さんですね!」
「おー、そうだ、何だろうなこの謎の高揚感……って、あー、なりきらないと行けないんだった。飯塚ヤマト。新米監察医だ」
その台詞にQクラスが名乗る。向いた視線に私も口を開く。
「高宮一葉です。今日は彼らの付き添いに」
「高宮……一葉……あの推理小説家の?」
「あの、というのがどれを指すのか知りませんねぇ」
「いや……悪い……男かと思ってたから」
「おや、監察医くん、まだまだ視点が足りませんよ」
そう劇中の台詞を告げてニコリと笑っておく。謎の感動をしている彼にキュウくんがまた頷いている。
「って、最後の一人は」
「大鷹大翔です。貴方とは年が近そうですね、飯塚くん?」
「大鷹大翔……うわぁ、今、似合いすぎて鳥肌たった」
「どうかされましたか?」
「いや……なんでもない」
そう首を左右に振った彼に、そういえばと口を開く。
「先程、新入りとおっしゃってましたが、いつもは固定メンバーで?」
「んー、今回は特に多いみたいだな。受付ですげー弾かれてたし。でも大体は一緒だぜ」
「大体は?」
「あぁ、あそこにいる『薔薇嬢シリーズ』の『飯塚アキ』もそうだし――『再推理シリーズ』の『飯塚龍一』とか、『クリティカル』の『シキノ』、『ハツカネズミ』の『佐藤刑事』とか――まぁ今や十数人くらいか」
「ぶはっ、飯塚一家勢揃い……」
吹き出した私に、飯塚ヤマトと名乗った彼は苦笑いする。
「だよなぁ、そうなるよなぁ。でも今回はましだぜ。あの飯塚龍一、ガキの俺たち連れてたりするし」
「ガキの俺たちというのがなんとも面白い表現ですね」
ケラケラと笑いながら言えば、言った彼も頷いたが。
「でもまぁ、今回、変な文章来てたしさすがにな。それで古参も新参も面白半分って感じだな」
「変な文章?」
そう突っ込んだキュウくんに彼は首をかしげる。
「うん?アンタ達には来てないのか?」
「知人に代わりに参加してほしいと言われまして。ファンだからいけるだろうみたいなノリで」
「あー、なるほどなぁ。ってことはファンクラブに入ってるわけじゃないんだな」
「ファンクラブなんてものがあったんですか」
初耳である。Qクラスと賢一くんが私を見たが、私は基本作品を投げて終わるためよく知らないのだ。
「あぁ、会員制のな。今回は謎な文章もあるんだが、一緒に本物の環先生が来るんじゃないかって噂があるんだよ」
「へぇ、あの環ナマエ先生が。すごい偶然ですねぇ。サイン貰おう。素顔わからないから誰かわからないけど。はっ、もしや貴方では?」
「バーロー、飯塚ヤマトでもなんでもない俺はただの医大生だ」
「なんだ、残念」
そんな会話をしていれば、彼は顔なじみに呼ばれて向かってしまった。Qクラスと賢一くんがこちらを凝視しているが。
「何か?」
「先生は知ってたんですか?色々」
「いえ、全く。来たのも偶然ですし、最初は断ろうと思ってましたから。それにファンクラブがあるとも聞いてませんし」
肩をすくめて告げる。賢一くんが「先生は興味がないだけでしょう」と告げたが。まぁ、そうなのであるが。そして入場が締め切られたらしい。しまった扉に、徐々に照明が落とされていく。
「何か起こると思いますか?宵闇の友人さん」
「……そうですね、貴方が起こると思えばおこるのでは?」
「やめてください、そんな人を死神みたいに」
そうして暗くなった後、合成音声のような声が流れ出す。
『皆さまこんにちは、はじめまして。いや、はじめましてはおかしいでしょうか。こんにちは、私の登場人物達』
その言葉に私は口を覆う。Qクラスと賢一くんがこちらをみたが、私は肩を揺らして笑うだけだ。私じゃない、他人である。おそらく――合成音声は続けてこう告げる。
――自分が環ナマエであると。
『私は環ナマエ。君たちを生み出した創造主だ』
――なにかを始めようと。
『役者も揃ったようであるし――せっかくだから始めようか。名探偵連続殺人事件を』
――そして、次に聞こえてくるのはおそらくは耳をつんざくような悲鳴だ。
舞台にライトがあたる。舞台の上には先程までなかった死体が用意されていた。