小説家は模造品を評価するか(10)


 22分の4の殺人とは、タロットカードをモチーフにした事件である。大アルカナ22枚の中の、4枚のカード。それに見立てた殺人が起こった、という程の話だ。今回あの舞台に現れたのは4枚のうちの『吊るされた男』だろう。舞台の奥にある旗を掲げるための装置、または旗を掲げるために使用する棒状のもの。それが上がると同時に死体が降りるというトリックだった。
 だが、現実は綱(もしくは糸)を巻き取る機械にそんなものをつけることなどできない。だから犯人は自分で綱をつけ――死体と共に降下した、という考えが正しい。本来ならもっと宙で止まるはずが、地面に程なく近いところで止まっていたのはだからだ。
 そして、あの図を見るに――犯人は絵画のようなトリックを好むことがわかる。ということは欠番の中での『作品』は限られていく。22分の4の殺人の残り二つ、薔薇嬢シリーズの『ドールハウス』にでてくる蝶の標本の人形、そして、監察医シリーズの21グラムの証明だろうか。このうち、人を殺す段階から始まるトリックは21グラムの証明であり――現実で人を殺せない、または必ず失敗するのもまた21グラムの証明だ。犯人が私のトリックに手を付け加えない限りは、という言葉がつくが。と、いうことは消去法で別室にあったモノは薔薇嬢シリーズのドールハウスにでてくるに『蝶の標本の人形』なるだろう。ならば、一度読んでいる七海はわかるはずだ。

 ――あとは、犯人が何を狙っているか、である。

 犯人がもし、くだらないに過ぎる話であるし、お粗末にもほどがある話にはなるのであるが――良くある恨み等という話ではなく、他者が持つ『欠番』を狙っての犯行になるのであれば、おそらくターゲットを変更してくるに違いない。これは完全な推測であるが、常連は何らかの形で『欠番』を持っている可能性が高い。というのも、登場人物になりきるには最初の話が欠如した状態ではできない。第一被害者の佐藤刑事というのは飯塚龍一の相棒となる警察官だ。彼もまた、初めての登場は『欠番』にあたいする。欠番のトリックの数と人数はほとんど同数だとみえる。ならば、今日、描いていた計画のターゲットはすり替えられる。

 ――たとえば、あの場で全冊持っていると公言した私、だとか。

 ギィ、と、扉が開く音がする。
 21グラム。それが人間から消失ことにより、そのトリックは完成する。ならば、元から自分の体重に21グラム足しておく。まぁ、もとより生じるのはターゲットの変更により21グラム程度の誤差ではあるまいが。コツコツと聞こえてきた足音は寝たふりをする私のそばで立ち止まる。さて、興じようではないか、死体ごっこを。


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