小説家は模造品を評価するか(11)
私を見つけた誰もが息を飲んだ。ぶっちゃけてこの宙吊りが辛いために早く解放してほしいが、目を開くのは犯人が遠ざかってからにするとしよう。やっぱり21グラムどころの誤差でないため、見かけほどに首がしまっているわけではない、が、節々に巻かれた糸が痛い。
ハッとしたように叫び声があがる。高宮先生!と誰かが叫ぶ。成し遂げた人物は恐れたように下がり、作者のせいにする。作者が作者を殺すとか笑える話だ。
「先生!」
そうかけてきたQクラスと七海、賢一くんであるが。犯人の他にトリックを知ると推測できる飯塚ヤマトは私を見上げ――犯人やその他に退室するように促した。ホテルのスタッフが誘導し、何処かに消えるのを眺め――彼は私を見上げる。
「高宮センセ、これはちょっと……いや、トリック完成してるんだけど……」
そう告げた彼に周りは?を浮かべたようだ。私はカッと目を見開けば周り――というよりQクラスが叫ぶ。
「し、したいが――むぐ!」
「騒がないほうがいい。彼女は死んだ、いいね?」
「そろそろ右半身が辛いので助けてもらえませんかね」
そう言えば飯塚龍一が私に手を伸ばし、糸やらロープをご丁寧に外す。
「なんで生きてるの!?」
「言ったでしょう、環ナマエのトリックは現実では失敗するんです。他の二人に至っては死体をトリックを使ってかざりましたが、今回に至っては殺人からトリックに含まれます」
「――が、このトリック、医学的には絶対死なないんだよなぁ。いいとこ気絶」
そう告げた飯塚ヤマトに、流石医学生ですね、と宙吊りのまま答える。彼は苦笑いをいうかべて救出される私を見た。
「でも、トリックは完成してるだろ?現実なら宙には浮かないし、アンタも気絶してない」
「悲しいかな、ターゲットを変更したから私は気絶も何もありませんでした。が、ターゲットを変更したことにより想定より軽い私は宙に浮きました。ちゃんと21グラムの重りも用意したんですよ?」
抱え上げられるように降ろされる。飯塚龍一にありがとうございます、と言えば彼はため息をついたが。賢一くんがよろよろとやってきて、私にハグをする。
「よかった、先生が……亡くなったかと……」
「私は中々死にませんね」
客観的にそうなので答えておく。まぁ、飯塚龍一が彼を引き離したが。ちなみに21グラムはスティックの砂糖7本分である。隠し持っていたものを床に落としそこにいた彼らを見た。
「さて、と、そろそろ私の部屋を漁ってる所じゃないですか」
「うん?」
「ターゲットを変更……そうか、先生が欠番を全て持ってると言ったから……」
納得した流くんに、そういうことです、と告げた。メグちゃんが「えっ!?」と声を上げる。
「じゃあ元はヤマトさんを殺そうとしてたってこと!?」
その言葉に飯塚ヤマトは驚いたようである。やはり彼は欠番を持っていたらしい。当の飯塚ヤマトは目を見開いて驚いた。
「うぇっ!?」
「多分重りからしてそうだと思うよ」
キュウくんはそう言って風船で隠れた重りをみた。おもり?と首をかしげた遠山くんに、飯塚龍一が口を開く。
「21グラムの証明は人間が死んだ際に体重の減少が起こるということを利用したものだ。被害者と体重を均等にした重りを天秤のようにしておけば体重の現象が起こると――」
「そうか、死体が上にあがる!」
「まぁ、実際は21グラムの減少があるかどうかは不明確です。死亡する直前の発汗蒸発で減少する説が有力ですが、当時の秤のネジが壊れていた説もある」
「あー、確かにこれ俺と大体均等だわ……こわ……死なないとわかってても怖……」
そう宙にあるロープに捕まった彼に重りが釣り合うように同じ高さにあがった。
「彼が狙われたということは……」
「恐らく犯人は欠番小説狙いかと」
「おい、それはやばいぞ。常連は一人一冊は持ってるんだ」
彼の言葉に私も飯塚龍一もやっぱりか、と納得する。「じゃあ、逆に」とキュウくんがくちをひらく。
「この会の常連は一人一冊持ってることを知ってるってことですよね?」
「あぁ――」
「ま、私の部屋に行けば犯人が私の荷物を漁ってるんじゃないですか?では、探偵諸君、証拠はそろいましたかね。手っ取り早く小説のクライマックスをしましょう。犯人と対峙して、解決編を始めましょうか」
私はそうひらひらと手を振って歩き出した。