序章(2)

 所属している探偵事務所に向かえば、恩師でもある団先生は探偵学校にいると言われる。併設に近いその場所に向かえば、年齢様々な学生達がたくさんいるのが見えた。まぁ、比較的十代二十代あたりが多いので大学みたいだと言えばそうなんだろう。まぁ、行ったことはないが。そういえば海外に向かう前に新しいクラスを作るから云々と団先生が言っていた気がする。試験用のトリックはきちんと提供したし、別に試験監督を(本意ではないが結果的に)サボることになってしまっていても構わないだろう。いや、同期の紫乃ちゃんにチクチク言われる可能性はあった。それは痛手である。
 とりあえず理事長室に向かえば少年少女達が入れ違いで出てくる。初めて見る顔ということは彼らが新しく作られたQクラスだろう。元気だなぁと思いながら見送り、理事長室に足を踏み入れた。私に気づいた団先生は目を瞬いて口を開く。
「おや、近宮くん。帰ってきてたのか」
「はい、今朝。警視に報告していたのでこの時間になりました」
「片桐くんからまた厄介な事件だったとは聞いているよ」
「えぇ、少しばかり」
 そう言ってもう一つの資料を取り出しながら部屋の端にある椅子を見る。この大きさは七海だろうか。とりあえずスルーするかと思いながら団先生にことのあらましなどを報告する。犯人の現在を突き止めて海外にと言いながらお土産のお菓子を渡せば部屋の端にあった椅子が動いた。
「おま、長期間いないと思ったら海外いたのか!?」
「わー椅子が喋ったー」
 棒読みである。
「これは珍しい椅子だー、ドクタードクロにいわなくっちゃー。解体だー」
「お前な!」
 変装をといた七海に、これまた棒読みで、七海だったのかー気付かなかったーと言えば団先生と紫乃ちゃんが笑ったのでよしとしよう。
「とりあえず、あとは警察が現地警察と掛け合ってくれるようなので撤収しました」
「捕まえなかったのか。逃げたらどうすんだ」
「逆に捕まりたいんじゃないかな。怯えてたし。私が近づいたら殺されると思って自殺しそうな感じだったから警察の方がいいなって。あの手の人に何故かビビられるんだよね」
 そう肩をすくめる。まぁ、どう見ても私はそちら側にみえるよな、とは自分を客観視した意見である。
「お前が黒い服ばっかり着てるからだろ!」
「そうだな……お酒の名前で呼んでくれてもいいよ」
 そんな軽口を返し、団先生をみる。
「さっきの彼らですか?新しくできたQクラスのメンバーは」
「あぁ。君にも授業を受け持って欲しい」
「まぁ、友人の依頼は終わらせましたし、受け持ちましょう。しばらく暇ですし」
「締め切りは大丈夫なの?」
 紫乃ちゃんの言葉に固まる。そしてスケジュールを思い返す。飛行機の中で多少は書いたが海外の時差や海外にいた日付を考慮した結果は大丈夫ではない。
「大丈夫ではないですけど、大丈夫」
「いやそれは大丈夫じゃないだろ」
「寝ないでやれば終わらないことはないんだよ、七海。では、団先生、授業に関して詳しくは後日伺います」
「あぁ、新しい話を楽しみにしているよ」
 そう笑った彼に頭を下げる。締め切りか。道理で着信が残っているわけである。

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