その血筋は犯罪者へと誘うか(6)
お風呂の準備ができました、と渡されたタオルには薔薇が刺しゅうで描かれている。真っ赤な薔薇とイニシャルの刺しゅう入りのタオルである。ありがとうございます、と言って受け取り何時までに大浴場に行けばいいのかを確認しておく。終わりまじかのほうが人が少ないだろう。火傷を隠している以上、人がいないタイミングが好ましい。まぁ、ドクタードクロが作った皮膚カバーだ。このまま入っても大丈夫なのであるが。
ぼんやりと集められた人間の関係性を考えていたころだ。ノック音がしたため、ベッドから起き上がる。
「嬢ちゃん、いるか」
「はい、どうぞ」
そう言えば、七海がはいってくる。扉を閉めた彼に、私が「帰れなくなってしまいましたね」と言えば彼は眉間にしわをよせたまま私を見下ろしたのだが。
「……皇翔とは知り合いだったのか?」
「いいえ? 恐らく金田一君はわざと驚いた私の表情を見てそう思ったのでしょう。知らない人のデスマスクにはあまり驚かないでしょうし」
私は普通に立ち上がり、お風呂の準備をする。そうか、と何やら安堵した彼に、私は首を傾げた。
「七海はどうしてここに?」
「だから、招待状が届いて、事件が起こりそうだったから来たんだ。まあ、もう前からおこっちまってるけどな」
七海はそういって近くにある化粧台の椅子に座る。
「どう思う? この事件」
「さあ、さながら推理小説のようだとは思いますが……しかし、何かしら青薔薇に関係するものが起因のような気もしますね」
私はそう言って生けてあった薔薇を一輪手に取る。赤いバラだ。血のように、赤いバラだ。
「青薔薇に?」
「――七海は、二年前のホテル火災を覚えていますか」
「二年前――ああ、お前が無茶して入院したやつだな」
眉間にしわを寄せて彼はそう告げる。「では」と私は言葉を続けた。
「私がその時、何を目当てにそのホテルに泊まったか覚えていますか?」
その問いかけに七海は記憶を手繰り寄せているようだった。そうして、しばらくの沈黙の後、はっとした表情を浮かべた。
「――青薔薇の展示」
「はい。結局青薔薇は火事で焼失、日の目を見ることはありませんでしたが」
「ということは、さっきお前が言っていたことを含めると、その時の火災に巻き込まれた人物で『薔薇の名前』が氏名にふくまれている人を集めたという線が濃いな」
「はい、明智警視に頼んでその時の名簿を取り寄せない限りは推測の域を脱しませんが。この時間だと少しね」
「よく言うぜ、この間夜中に俺たちを顎で使ったくせに」
七海はそう言って私を見下ろす。私は肩をすくめる。何度も同じことをしかねるし、私が病院を出ていることがばれると非常にまずい。七海がどこか心配したように私を見下ろす。
「――あの中で知り合いはいるのか?」
「いえ? 私の知り合いはいませんね」
私の返答に彼は「どういうことだ?」と小さくつぶやいた。私が首をかしげてもその問いの意味を教えてはくれない。なので、私は私で別のことを考えることとするが。
犯人は何故薔薇の名前がつく人を集めたのか。ターゲットをどうやって見つける気なのか。まだ謎は多い。