その血筋は犯罪者へと誘うか(9)
「あの事件はあの二人に任せましょう」
部屋に戻り、開口一番に私は七海に告げた。七海は眉間にシワを寄せた。
「なんでまた」
「明智警視のぼやいていた素人探偵は恐らく金田一君のことです。そして、遠山さんは地獄の傀儡子こと高遠遙一だ」
七海にそう告げる。七海は「じゃあ、あれは」と小さくぼやいた。
「でも、この事件は恐らく高遠遙一がからんでいるわけじゃない。じゃないと、彼は金田一くんの捜査に加わらない。推測でしかありませんが、あの二人は何かしら密約がある。この事件を解決したら出頭するとかそういう感じかもしれない。どちらにせよ、高遠遙一はこの件に関して事件にはかかわっていないと私はふみます。彼や私みたいな存在は、スケープゴートにはもってこいですからね」
そういって部屋に飾られた薔薇を見る。七海は私の隣に座った。
「あの現場は全体的に私っぽい。私の推理小説に現れる描写によく似ている」
私の発言を七海は否定しない。実際そうだからだろう。薔薇の花は私が好んで使うモチーフでもある。私は飾られている薔薇を一輪手に取ると、薔薇の花弁を花占いのように一つずつむしる。脳裏に血で赤く染まった白薔薇がこびりついた。
「――恐らく、彼らは知っています。私がどういう人間か。どういうものを見せれば、思考がそちらに傾くのか。いい案です。うまく言えば、商売敵に罪を着せて、私をそちらに引きずり込める」
その言葉に、彼は目を見開いた。そうして、「冥王星か」と小さくつぶやいた。私はうなずいて肯定する。恐らくは、この事件は冥王星が噛んでいる。
「わかりましたか? どうして、私が事件をあの二人に任せたか」
「ああ、俺たちが止めるべきはそっちだ。あいつらは現場に必ずいる」
七海の返答に、私はよくできました、と言わんばかりにうなずいた。早速そちらに問い合わせてくると立ち上がって部屋を後にしようとした彼をみた。
「七海、私が殺されても復讐になんて身を落とさなくていいからね」
私の推測通り動くのであれば、私は犯人に手をかけられる一人になる。勘違いという最悪なものであるが。ひらり、ひらりと、薔薇の花弁が床に落ちる。
「お前が簡単に死ぬわけないだろ、この間も生きてたんだから。俺もな」
子供をあやすように私の頭をなでた七海はすぐ戻るとその場を後にする。私は最後に残った一枚を見つめてから、持っていた手帳を再度開いた。
誰が冥王星なのか。例のホテル火災の名簿を七海の取り寄せ待ちである。誰かには変装しているだろうが、それが誰かは今のところ不明だ。考えごとをするためになんとなく父親の手帳を眺めていれば、この屋敷によく似たものを見つける。十字の館とかかれた建物の構造をみてまた変な建物だと思う。螺旋階段は円なのでたしかに昇り降りしていれば方向がわからなくなるだろう。もう一度ノックされて返事をすれば、七海が名簿ではなくカードをもってやってきた。どうやら私のカードも扉の下におちていたらしい。またローゼンクロイツからの指示だ。ほらよ、と私に見せたそこには時間と場所が書かれていた。