その血筋は犯罪者へと誘うか(12)


 もしも、だ。私がきちんと気を配れていれば、彼女はこのような事件を起こさなかったのだろうか。刑事さんにラウンジに集められて、高遠遙一が逃げ出したから誰かと一緒にいるようにと告げる。同性だからと七海は佐久羅京と二人組を作り、私は彼女と一緒に過ごすことになる。きっと彼女は私を勘違いして憎んでいるだろう。でもある意味それは正しいことのように思う。もっとはやくに彼女を気にかけていれば、こうはならなかったからだ。
 だから、私は金田一くんの意図を汲んで二人っきりになるようにエントランスに彼女を誘導し、私は彼女を見上げて口を開く。緩やかに笑って。
「ごめんね」
 その言葉に、彼女は持っていた黒い薔薇を振り上げ――こっそりと跡をつけていた金田一くん達に止められたのであるが。
「そこまでだ」
 金田一くんの言葉に彼女は黒薔薇を下ろす。こっそりつけていた金田一くん達が階段から下りてきて合流する。
「ひっかかったな、もう逃げられないよ、ローゼンクロイツ」
 金田一くんが動きを止めた彼女の手から薔薇の花の部分を掴み、誰もいない方向に投げた。触れようとした彼の後輩に、金田一君は注意を促す。
「それ触らないでね、多分猛毒が仕込んであるから」
「えっ」
 きっちり七海が私に近づき、彼女からすこし遠ざける。金田一くんは推理を続けた。
「高遠が部屋からいなくなったから、行動を起こしたんだろ? 高遠が閉じ込められたままだと、犯行をあいつのせいにはできないからな。で、おっさんに一芝居打ってもらったってわけ」
 金田一くんの言葉に剣持警部がうなずいた。良い信頼関係だ。
「みなさん、どうして自分がこの会に招待されたからわかりますか?」
 金田一くんは私達に問いかける。さぁ、金田一くんの推理に耳を傾けよう。


 金田一くんの推理は私の推理と合致している。ここに集められた人はホテル火災に巻き込まれ、なおかつ薔薇の名前が入っている人物。そして、犯人は最初殺す人間がわからないから風呂場に罠を仕込んだ。イニシャルの入ったタオルを使わなければ、その人は罠にかかった人物ということだ。それを聞いて冬野八重姫――冬野さんが口を覆った。私は気にするなという風に首を小さく左右に振ったのであるが。
「最後のターゲットである環ナマエさんを仕留められなくて残念だったな、ローゼンクロイツ」
 コツコツと彼は彼女の前に移動する。
「あんたが真犯人、ローゼンクロイツだ。月読ジゼル」
 さて、ここからは探偵役である彼と彼女の掛け合いがはじまるのだろう。そっと七海が私のそばから外れる。七海はいつでも動けるようにさりげなくその人物の近くを陣取った。
「貴方はミスを二回犯してる」
 その言葉にたしかにと私は内心頷く。彼女は祭沢一心が殺された際の詩に、薔薇の風呂に入ったといっていた。しかし、女である彼女が、男湯に浮かべられた花が同じだとはわからないはずである。のぞいたり、準備をしないとわからないのだ。もうひとつは、合流した時だ。彼女は世話人ではなく毛利帝ではなく、たしかに金田一くんと七瀬さんの名を呼んでいた。彼が探偵役として定着していたのならわかるが、そうでないなら世話人をしている毛利帝、もしくは全員に尋ねるはずなのだ。
「待って、じゃあ私がどうやって一心さんを殺したっていうのよ。あれは完全な密室だったんでしょう!?」
「密室じゃないよ」
 そう返した金田一くんは円形の応接間に向かう。私たちもその場所を目指した。

44