その血筋は犯罪者へと誘うか(16)


剣持警部にジゼルを預け、傷が! と同じく駆け寄った金田一くんに私は傷口から手を離した。はらり、と真っ赤な薔薇の花びらが舞いおちていく。薔薇? と呟いた彼に、高遠遙一が物知り顔で口を開いた。
「金田一くん、安心していい。彼女の本名は近宮ナマエ。マジシャンだ。今は兼業として、環ナマエとして推理小説を書いてもいるようだけど」
 高遠遙一の言葉に金田一くんは頷く。
「推理小説作家だってことはわかってた」
「え、でも、あの時、環さんは推理小説作家じゃないって……」
「それは俺たちの勘違いだよ、美雪。環さんはあの時否定もしてなければ肯定もしてなかった」
「やはり観察眼がいいですね。明智警視から噂を聞く通りです」
 そっと、ジゼルの頭を撫でて私は高遠遙一達がいる方向をみる。
「でも、高遠遙一、残念ながら、私はもうマジシャンをやめたんです。だからマジシャンだと言う言葉は今のわたしに合わない」
 そう告げて、私は火傷を隠す特殊メイクを外す。火傷の跡がないと思ったら、と高遠遙一が口元に軽く笑みを浮かべた。
「君は金田一くんを手伝うかとおもいきや……君は傍観者だった」
「そもそも、私が容疑者を特定しようとタオルを漁ろうとすれば、貴方にあってしまいましたからね。今回は全てタイミングが悪かったとしか言えません。それに、探らないといけない人がいたので」
 私は腰に手を当てる。他に探らないといけない人? と首を傾げた金田一くん達に私は彼を見た。
「本来ならば、あくまで一般人の金田一くん達に関わらせたくなかったのですが」
 演技などもうやめだ。高遠遙一が近くの柱に背を預け話を聞く体制に入る。
「残念のことに、この世には高遠遙一のようなことを組織的に行っている真っ黒な組織もあるんですよ。決して自分は手を出さない、高遠遙一のように不出来な人形を自ら処分するわけでもなく――」
「かけた催眠によって処分するんだ。まぁ、簡単にいうと自殺するように仕向けるんだよ」
「おや? その口ぶり、知り合いですか」
「互いに商売敵だ」
 高遠遙一はそう言って肩を竦める。金田一くんが「じゃあ」と声を上げる。
「この計画を立てたのは」
「その組織の一員です。まぁ、うまくいけば商売敵である高遠遙一と、私の依存先である七海を排除できますからね」
「君は目をつけられているのか。まぁ、それもわかる。君が書く小説のトリックは現実なら人を殺すことはできかねるが、それでもなお絵画のように美しい。君は恐らく現実でも鮮やかに人を殺すトリックを作り上げることができる」
「私は人を殺すトリックは作りませんよ。それは推理小説を書くにあたり、私が決めてるルールだ。現実は紙面のように思い通り人は動きませんしね。今回の私がした行動のように」
 肩をすくめてそう告げる。
「私が金田一くんに殺人事件の調査を任せていたのはその方面を洗っていたからです。高遠遙一と何か秘密の協定もありそうでしたしね。知り合いの方から君の噂は聞いていましたから、貴方に任せても良いと判断しました」
「えっ」
「さて、前置きが長くなりました。あまり引き伸ばしても、逃げる隙を増やすだけだ。計画を遂行できているか確認するため、彼らは必ず現場にいる」
 私はそう言ってその人を見た。
「そうでしょう? 毛利帝」

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