その血筋は犯罪者へと誘うか(17)
周りの視線が毛利帝にむいた。何を、と言った彼に私は彼を見つめる。私は怒っているのだ。
「何を? とは、面白い。残念なことに、本物の毛利帝さんは安全な場所に一応保護させていただきました」
「――本物の毛利帝?」
金田一くんはそう言って首をかしげる。
「はい、高校生である貴方はわからないかもしれませんが、彼は意図的にスプリンクラーの故障を放置していた。そしてそのことが原因で延焼したホテルでは傷者が多数出たあげくに死人もでた。彼はホテルの支配人、責任者だ。刑事的な罰を受ける対象になった」
「……業務上過失致死罪、か」
高遠遙一の言葉に私は頷いた。
「はい、実際に知り合いの警察に調べてもらえば彼は業務上過失致死罪に問われた結果、今は塀の中にいるはずです」
「じゃあ、こいつは……」
剣持警部が彼を見る。
「塀の中にいる人物と同じ顔をした人物が、彼がするであろう行動をとりつつ、何故この事件の様子を見ていたのか」
私は淡々と告げる。その先は高遠遙一が告げるのであるが。
「立てた計画を、ジゼルがうまくできるかどうかに見守っていたわけだ」
「そんなこと、何かの思い違いです」
毛利帝はそう言って後ろに下がる。後ろにいた七海にぶつかったけれど。
「まだ言い逃れをしますか? あまりにも見苦しい。彼が言いましたが、物語のエピローグは美しくなくてはいけない。貴方の行動はまるで美しくありません。ならば無理やり化けの皮を剥ぐだけだ。七海」
「おうよ!」
そう言った七海は彼を押さえ込み、彼のマスクを剥ぎ取った。見えた顔は若い男だ。てっきり賢一くんが一枚かんでいるかとおもったが、そうではない。彼は大きく舌打ちをしてみせた。私は彼を見つめる。
「はっきり言って、貴方が立てたこの計画は本当に胸糞悪い。よくも異母妹を殺人犯に仕立てあげてくれましたね」
彼ははっと笑った。私はそれでさえも気に食わなくて、眉間にしわを寄せる。
「貴方達は私をそちら側に落とすために復讐心に駆られたジゼルを利用した。まあ、私と彼女が異母兄弟とは思ってはいなかったが、そこに依存先の七海をいれ――彼が死ぬようにしようとした」
「……だって、そうだろう? ケルベロスは放っておいてもアンタはこちら側に来る、と言っていた。だが、何もしないのにアンタがそうなることはないじゃないか! こうでもしないとね!」
「おや? 彼なら静かに私をおいやっていましたよ。精神的にね。私が一番信頼してる七海に私に対する疑心感を植え付けた。私にはそれが一番ダメージが入ると理解して。あとは彼は私が欲しい毒のような言葉を囁くだけだった。それなのに貴方はいらない事件をおこした。これは決定的な失敗だ」
はっきりとそう言って、私は真っ直ぐに彼を見る。決定的な失敗、と繰り返した彼に私は彼を見る。
「私は貴方達と一緒にはいかない。異母兄と同じ道は辿らない。それが血に怯えるジゼルにとって唯一の光になるのであれば」
そう言って私は胸に手を当てて礼をする。舞台に立っていたころのように。
「……――私は近宮ナマエ。団探偵事務所に所属する探偵です。今までも、これからも」
その言葉に、七海は目を見開き――そのまま思いっきり強く冥王星の一員を取り押さえた。
「ってことだ! 残念だったな、冥王星! おとなしくしてろ!」
そのままヘリを運転していたDDCの探偵が七海に加勢する。押さえつけられた彼は手錠をかけられていた。
「まさか団探偵事務所の方とは……」
近くにいた剣持警部はそう言って私を見る。私は苦笑いをした。
「団探偵事務所?」
「警察御用達の探偵事務所だ。怪奇的な事件の調査や時効前の再調査をしてくれる」
金田一くんは、というか高校生組が私と高遠遙一を見比べる。正反対な生き方だからだろうか。
「えっ、え!? ええっ!?」
その様子に私と高遠遙一は同時に肩をすくめていたとは七海の目撃談である。