白い本丸と魔法
さて、気を取り直して。
大包平さんの一撃は魔法と思われる。彼の感情の昂りに呼応したと思われるのだ。ということはある程度は制御できてもらわないと困るし、恐らく同田貫さんや御手杵さんも同じようなことができるはずだ。今日の分の仕事は終わらせたのだし、彼らに話しておいたほうがいいのかもしれない。というか、制御をできるようになってもらうしかない。そうぼんやり執務室で考えていたら破壊音がした。肩を跳ねさせてそちらをみる。道場の方だ。バタバタと秋田くんと五虎退くんがやってきて、「主君大変です!」と告げた。
「大包平さんと同田貫さんと御手杵さんの手合わせ中に、大包平さんがぱぁぁっどーん!っと同田貫さんを!」
……なるほど、やはり制御が先決らしい。
道場にたどり着いてみると壁に穴が空いていた。同田貫さんは大丈夫だろうか。助け起こされている同田貫さんにとりあえず治癒魔法をかけて手入れ部屋に行くように言っておく。
「大将、手入れ部屋は大丈夫みたいだぞ」
「えっ?」
「刀身は傷ついてない。損傷があったのは体だけみたいだ。大将が魔法を使って治してくれる時と一緒」
薬研くんはそう言って刀を見せてくれる。確かに刃こぼれも見当たらない。
「何があったの?」
「大包平の旦那が二人に追い詰められてな、そうしたら刀身が光って――こうだ。斬撃が飛んだように見えたんだが……」
ということはやはり魔法が発動したらしい。はぁ、とため息をついて道場の方を見る。大包平さんがピシリと固まっていた、というか正座をした。近寄ってきた御手杵さんがいつも通りのんびりと口を開く。
「主ー、あんまり大包平を怒らないでくれ。俺たちが見てみたいってけしかけたんだ」
「いえ、怒っていません。ただ、制御を教えないとな、と……」
「制御?」
「真剣必殺のたびにそんなことが起これば、大変なことになるので……」
「確かにな。遡行軍も検非違使もビックリだ」
「恐らく、御手杵さんや同田貫さん、下手をすれば勲章を持っている方はできてしまう可能性がありますから……」
「俺たちもか?」
「はい、私の霊力とその勲章が馴染んだ結果だと推測してます」
「なるほどなぁ」
相槌を打った薬研くんはさておき、私は大包平さんを呼ぶ。彼はまっすぐにこちらに来ると勢いよく頭を下げた。
「主、本当に申し訳ない……!」
「私は怒ってません。だから、顔をあげてください」
そう言えば彼は恐る恐る顔を上げる。本当に怒ってませんよ、と言えば彼は眉尻を下げたまま顔だけ上げてこちらをみた。……なんか犬っぽいな。とりあえず頭をぽんぽんと軽く叩いておく。これで罰はお終いだ。様子を伺っていた大倶利伽羅さんがポツリと口を開く。
「主の魔法で直らないのか」
「あぁ、伽羅ちゃんは知らないよね。主、壊れたものは直せないんだよ」
陸奥守さん達が目を瞬いた。
「そうやったやが?」
「はい、壊れてしまったものは私は直せません。地道に修理するしかないです」
「放っておいても主の記憶で修復されるぜよ」
「これ以上洋風になるのはいただけないかなぁ……とりあえず、大包平さんは外で手合わせしてください」
「わかった……」
「それと、少し刀をお借りしても?」
そういえば彼は動きを止め、一部が顔を真っ青にした。……どうやら地雷を踏んでしまったらしい。私がごめんなさいと謝ろうとすると大包平さんは刀をホルダーから外して私に差し出した。
「いいんですか?」
「あぁ」
頷いた彼に刀を両手で受け取る。思っていたより軽い気がする。そのまま抜刀、としたいが扱い方があまりわかっていない私である。とりあえず鞘から抜いて刀身に馴染ませるように光の魔力を注いだ。刀身に光の粒子が纏う。私の方が穏やかななは、まぁ、体質というか性質の差だろう。難なく注げるということはなじんでいる証拠である。とりあえずそれを強制キャンセルし、刃を鞘に直してそのまま大包平さんに返した。
「もういいのか」
「はい、やっぱり私の霊力が馴染んでいるようです。大包平さん、そのまま抜刀してみてもらっていいですか?」
「?これでいいのか?」
「そのまま霊力を刀に集めるようにしてください」
「霊力を……?」
「わかりにくいかな……」
彼の手に手を重ねて私の魔力を集める。また光の粒子が刀に纏った。
「この感覚、わかりますか?」
「なんとなくだが。だが、先程の方がもっと……」
「先程のは貴方の感情が昂ったからでしょう。昂るたびにああなっても困るので、制御を教えます。とりあえず初歩はそれくらいです。物事に順番があるように、魔法にも順番があります。普段からその状態ができるようになれば教えてください」
「……わかった」
私が手を離すと光は消える。あとはまぁ彼次第だろう。一応制御のバングルでも作っておくか、と彼の手首に魔法をかけた。
「これは?」
「先程のような突発的におこる魔法ができなくなるようにしたものです。怪我人が出ても困りますので。意図的にできるようになれば効果はなくなります。御手杵さんや同田貫さんにはあとで渡しますね」
「ぐ、ぅ、仕方がないか……」
「なんで俺たちもなんだ?」
「御手杵さん達も多分できると思うので」
「俺たちも?」
首を傾げた彼らに私は彼らを手招いた。同田貫さんに抜刀するようにいえば彼は抜刀した。私は彼の手に手を重ねる。バチリという音がして刀身に電流がはしった。
「あぁ?なんだ、今の」
「同田貫くんは僕と同じ黄色だから、雷じゃないかな」
「雷なんざどうすんだ」
「それは使いようというか……?大包平さんは初歩を抜かして応用を習得した感じなんですけど、お二人は練習次第でなんとでもできますよ」
「じゃあ俺は何ができるんだ?」
「御手杵さんは水色なので、物を凍らせれますね」
「物を凍らせる?」
「私はよく足止めにつかったりもしますが……」
「足止め」
「御手杵はアイスつくれないの?」
「御手杵さんの魔法とアイスの魔法はまた違うものなので」
そう緩く首を振る。
「まぁ、皆さん強いので使わなくてもいいと思います。私はどうしても体力も少ないし、力も弱いので魔法ができた方がよかった、というだけの話ですし」
さてそろそろ話は終わりだと、ぽんぽん、と手を叩く。
「そろそろお話は終わりにして各自役割に戻りましょう」
私の言葉に短刀や脇差たちが「はーい」と返事をした。うむ、今日もいい返事だ。
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