白い魔女と眠れる心(1)
「あの一期一振」
縁側で五虎退くんの虎と戯れていた大倶利伽羅さんが口を開く。珍しいと思いながら私は「はい」と口を開いた。
「目を覚まさないのか」
「はい、私がこちらに来てからずっと、いえ、鯰尾くん達を言うにその前から目を覚まさないみたいです」
「手入れ部屋は」
「手入れ部屋には何度か。でも、刀身も外傷も治っているので……恐らくは心の問題でしょう」
「心?」
「はい。目覚めるのを拒否しているのか、それとも心がかけてしまっているか」
そう言ってぼんやりと考える。恐らくはマスターならわかることなんだろう。大倶利伽羅さんは首を傾げてこちらをみた。
「アンタは偶に不思議なことを言うな。西洋ではそんな考え方なのか」
「色々特殊なだけで私は日本人なんですけどね」
今は、と言う言葉がつくけれど。
そう苦笑いすれば彼はピシリと固まった。まぁ、驚くのも無理がない。色々と逸脱している。なんとも言えない雰囲気を切り裂いたのは今剣くんである。上から降ってきた彼は私の前で刀を構えた。
「あるじさま!ふしんしゃです!下がってください!」
「不審者?」
小首を傾げた私に大倶利伽羅さんは廊下の先をみて刀を構えた。げ、こっちにもいる!と聞こえた声は知っている声だ。
「ちょっと!君たち酷くない!?俺は知ってる感覚がするなぁ、別の場所のはずなのに知ってる街並みにでたなぁ、って思ってたんだけど!そりゃあ勝手に敷地に入ったのは悪……不審者か!」
「わかったようで何よりだ。どこからきた……?」
「イラっちみたいなのがきたな……ええい、助けてー、ナマエー」
「なぜ主の名を知っている!」
「……あのさ、君、堅物で真面目すぎって言われない?」
私はとりあえず今剣くんの背を押しつつ障子から顔を覗かせる。主!隠れてて!と言う声と黒いコートを着ている人が振り返るのは同時である。
「やっぱりナマエだ!やっほー!久しぶりだな!いやぁ、また元気な姿が見れて俺は嬉しいよ!……あ、ちょっとまって、俺のこと、覚えてる?大丈夫?」
そう言ってワタワタする彼に私は小さく「マスター?」と呟く。彼は「そう!」と大きく頷いた。
「ナマエのだいすきなマスター!」
彼はそう言うと「ほら!ハグとかしていいよ!」と手を広げる。とりあえず、ととと、と彼に近づいてハグをしておいた。
「oh……ナマエ、まだ素直なままなのね……いつか騙されないかマスターは心配……」
そう少し離れたマスターに私は小首をかしげる。
「マスター、どうしてここに?」
「うん?世界中旅してるんだけどな、ナマエに似た感覚を感じたからもしかしてって思ったんだよ。いやぁ、妖精の魔法も馬鹿にできない。で、ナマエ、こいつら誰?昔みたいに騙されてない?大丈夫?」
「だれがあるじさまをだますんですか!そっちこそだましてないですか!あるじさま、やっぱりふしんしゃです!!こんなあやしいやつが、あるじさまのしりあいなわけないです!」
「え、なにこのこ、毒舌……」
「怪しく見えても優秀な人なので大丈夫です」
「ちょっとナマエ?師匠にその言い方はないんじゃない?」
おいおいと泣き真似をした彼に私はクスクス笑う。こらー、笑い事じゃないんだぞ、と私の頭を撫でた彼は周りを見て、「で、こいつらは?」と比較的真面目な声で告げた。
「仕事仲間と言いますか……大丈夫、あんなことにはなっていません。まぁ、異質は異質ですけど……」
「だろうなぁ」
頭をかいた彼は私をみた。
「俺は安心してもいいの?結局」
「はい」
「本当に?」
「疑い深い奴だな」
「いやぁ、この子抜けてるでしょ?……え?何その表情。この子、超々純粋よ?」
「マスター、余計なことを言わないでください」
そうムッとして彼をみる。ごめんごめんと頭を撫でて見せた彼に私はとりあえず現状を話すか、と部屋に招いた。
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