SQUELCH!!


不思議の本丸の刀剣(2)



 こんのすけを通して連絡をとっている鶴丸さんの周りにいるのは見たことがない刀剣達ばかりだ。私の隣で完璧に苦笑いしながら、びっくりしましたと告げた一期さんは言葉を続ける。
「遠征から帰ろうとしたら、鶴丸殿たちが困っていらっしゃって。五虎退と知り合いのようでしたのでつれかえってきてしまいました」
「彼らとは演練で何度か手合わせをしました。お隣さんです」
「お隣?」
「私も最近知ったのですが、本丸にもお隣があるみたいで。こんのすけ曰く、玄関の番号を指定すれば共通の道に出れるとか」
「そんなものが……」
「おーい、お隣さん!主が君と話したいそうだ!」
 そう手を振った鶴丸さんに、私は返事をする。一期さんに一言断って鶴丸さんに近づいた。携帯端末から見えるお隣さんは私をみるなり頭を下げた。
「ほんっとうにもうしわけない!」
「いえ、お気になさらず。困ったときはお互い様ですし」
 苦笑いしてそう告げる。一緒に映っている歌仙さんもまた眉尻を下げていた。お隣さんはちらりと伺うように私をみる。
「申し訳ないんだが、しばらく預かっておいてくれないか?」
「しばらく?」
「今緊急の連絡がきてな、メンテナンスが終わるまでしばらくかかってしまうらしい。未定なんだってよ」
「げんかんからむかえにこれないのかい?」
 そう尋ねた男性にお隣さんは肩を竦める。
「そっちもメンテナンスらしい。大規模メンテナンスだ」
「主様、私もその連絡を受信しました。嘘ではないみたいです」
 こんのすけの言葉に別に疑ってはいないので「構いませんよ」と返答をした。画面の中の歌仙さんが安堵したように息を吐いた。
「本当にお隣さんに感謝しないといけないね。鉢あえてよかったよ。主、これに懲りたのならなにかをしながら指示を出すのはやめてくれ」
「うっ……悪いが、お隣さん、頼む。他の奴らは大人しくしてろよ!特に鶴丸!」
 そう言って通信が切れる。鶴丸さんが「と、いうことで!」と言い笑顔を浮かべて私をみる。
「よろしくな、お隣さ――」
「主!」
 一期さんの切羽詰まったようなその声に振り返る。いつもとは違った大きな扉が現れて、そこから弾き出されるように刀剣男士が入ってくる。というよりは慌てたように、だ。私の本丸の刀剣が担いではいってきたり、恐らくは他の本丸の刀剣が逃げるようにきたりする。最後に何かに弾かれるようにして大包平さんと御手杵さんが扉から出てきた。穏やかではないのは彼らは抜刀している。扉から何か異形の手がみえる。ヌッと顔を出したのは見たことがない――妖怪のような何かだ。鶴丸さんが口を開く。
「遡行軍か!」
 その言葉に私は理解する。とりあえず怪我人の保護が必要である。
「怪我人は出来るだけ後ろに!一期さん達は怪我人のフォローを!」
「!わかりました!」
「俺たちも手伝おう!」
「扉を閉めるのを手伝ってください」
「とびら?あのとびらを?」
「はい。そうするしかありません」
「主は下がっていろ!!」
「下がれません!その扉を閉めないと意味がないからです!大包平さん、それを扉の先におしやってください!扉を閉めます!」
「簡単に言ってくれる!」
「大包平!この前俺を吹っ飛ばした奴はできないのか?!」
「!!何故お前がここにいる!!」
「その説明はあとだ!できないのか!?刀剣の横綱のくせに!」
「!!やってる!」
 そう言った彼は一度距離を取る。代わりに出た御手杵さんに私は叫ぶ。
「御手杵さん、霊力を槍の先に集中させてください!」
 その言葉に彼は霊力を槍の先に集中させたらしい。ひやり、とした感覚がする。
「そのまま突き刺して!」
 彼はその言葉に攻撃をしゃがんで避けるとそのまま遡行軍の図体に突き刺した。その瞬間、パキリ、という音とともに敵が凍りついていく。私と御手杵さんは大包平さんをみる。
「大包平さん!」
「大包平、今だ!!」
 彼の刀剣に光がまとわりつく。彼はそのまま一部が凍り付いていく敵に一太刀浴びせた。光の斬撃が敵を扉の方に押し出すと、彼らは扉を閉めようと扉を押した。鶴丸さん達や何人かが扉を押し、徐々に閉まっていく。ギ、ともう一度覗いた手に誰かが舌打ちをした。私のそばを横切って、黒がかけていく。抜刀した彼は御手杵さんの背中を踏み台にすると奥にいた敵に刃を突き刺した。
「同田貫」
「楽しそうなことしてんじゃねぇか」
「主!これは、」
「扉をしめる!しのごの言わずに手伝え!」
 本丸からかけてきた刀剣達が加わって扉は閉まっていく。私はキーブレードを取り出すと扉に向けた。現れた鍵穴に向かってキーブレードから光が飛んでいく。かちゃん、という音がして扉は閉まり――扉は光を発して消えた。空に雲が見える。あまり良くない兆候なので払っておいたほうがいいだろう。キーブレードを地面にむけ、祈るように口を開く。
「清浄なる光よ、心の王国よ、不浄をはらい、我らを護りたまえ」
 光が宿ったキーブレードを空に向ける。ホーリーガードと呟けば光は空につきぬけ、光の粒子が空から舞い落ちた。ふぅ、とため息をついてキーブレードを離す。これは体に負担がかかるのであまりしたくないのだけども。主!と寄ってきた長谷部さんに、しっかりしなければ、と気を取り直す。
「大包平さん、事情は後で聞きましょう。とりあえず先に怪我人の手当てを。資材は足りるでしょうか」
 困ったように笑えば、長谷部さんは眉間にシワを寄せた。
「主、厳しいことを言うようですが、この本丸以外の刀剣を手入れする必要はありません」
「え?」
「主、今回は長谷部の言う通りだ。連れ帰った俺が言うのもなんだが信用できる奴らじゃない」
 はっきりと言った大包平さんに長谷部さんは頷いた。
「しかし、怪我人を放置はできません」
「主、こいつらが主の味方であるとは誰も保証ができないのですよ。主の命を狙うかもしれない」
「敵であると言う証明もできないでしょう。ならば、手当てをするべきです。帰る場所がある彼らをこんな重傷で放っておくわけにはいきません」
 私は引く気がないためそう強い口調で告げる。でも、彼らの言うことももっともだろう。それは理解している。長谷部さんが目を見開いて瞳を揺らした。そっと息を吐いて私は下を向く。
「すいません、貴方達は私を心配してくれているだけなのに……わかりました」
「主?」
「彼らの刀身は治さず体だけを治します。ゲートが治るまでは彼らにこの街で待機してもらい、本丸には入れないようにする。私がここに赴くときは最低二人は護衛をつける。これでどうですか?」
 伺うように長谷部さんをみる。彼は息を吐いて、仕方ありませんね、とわらった。
「主命とあれば、そうしましょう」
「大将、あれ結構疲れるんだろ。軽症ぐらいでいいぜ。あとは俺や他の俺が手当てするさ」
「僕達、包帯持ってきます!」
 そう駆け出した短刀を見送って私はもう一度キーブレードを取り出す。皆に癒しを、と呟けば白い花びらが散って彼らの傷が塞がったらしかった。騒がしくなる周りに、私はキーブレードから手を離す。ふらりと傾いた体を大包平さんがキャッチした。これは大きな魔法を使いすぎたな。
「主!?」
「魔法を使いすぎて疲れただけですよ、平気です……って、わ!」
「主、あとはワシらに任せぇ。街のことはだいたい把握しとう」
「僕らも詳しいから、主はやすんでいて……」
「ありがとう。でも、」
「主様、他の本丸には私から連絡を入れますがゆえ、おやすみくださいませ」
 私が何か言う前にこんのすけがそう告げる。私はお言葉に甘えて、と苦笑いをする。陸奥守さんが手を叩き、長谷部さんが促すと他の刀剣の一部が彼らの近くによって行った。私は大包平さんに抱えられる。歩ける、と言うがお構いなしである。まぁ、感じる暖かさに私は安堵して目を閉じてしまうのだけど。



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