SQUELCH!!


不思議の本丸の刀剣(3)



 人か、化け物か。よいものか、わるいものか。本来審神者は姿を見せないというのに、姿をみせたそれが計り知れない何かなのは間違いはないし、おおよそこの国のモノでもないのもみてくれから理解できる。白い髪、赤い瞳。かと言って本丸にいる悪戯好きの刀の色移りというわけでもない。なによりも、広がっている世界がこの国のモノではなかった。大包平に抱えられて坂を登って行った審神者は、あの明かりの灯った建物にいるのだろう。まるで、一つの街が本丸の中に存在しているようだ。家具もあり、電気も火も通っているそこはこの本丸の短刀曰く無人らしい。審神者の記憶を元に修復された場所。それがこの街へと変貌したのだという。
 こちらが信頼していないのがわかるように、向こうの本丸の一部もこちらを信頼していないがわかる。主は、主様は、主君は、大将は。
「優しい人なんだ」
 そう言って、短刀や脇差達は坂を登っていった。


 目が覚めたら朝である。しかも自分の部屋だ。起きたか、という声が降ってきてその出所を見れば大包平さんが座っていた。傍らには刀がある。手入れはきちんとされたんだろうか。そうぼんやりしていると彼は私をじっと見た。
「意識を失っていたが、大丈夫なのか?」
「少し大きな魔法を使いすぎてしまって、疲れただけですよ」
「すまん」
「?」
「俺が余計なことをしなければ」
「いいえ、貴方が謝ることではありません」
 緩やかに首を振る。眉尻を下げている彼に、大丈夫です、と笑った。そんな叱られた犬みたいな顔をしないでほしい。わしゃわしゃと頭を撫でれば、桜が少し舞った。
「大包平くん、主は起きたかい?」
 そんな声に彼は「あぁ」と頷いて障子を少し開けた。
「彼らにもご飯がいるだろうから何か食材を持って行こうと思うんだけど」
「私もお手伝いします」
「大丈夫なの?」
「はい、あ、でも、少しだけ身を清めたりしても構いませんか?」
「うん、待ってるよ。大包平くんも手伝って」
「あぁ、了解した」
 立ち上がった彼はそのまま「無茶はするな」と言い聞かせて外に出た。私はひょいひょいとお風呂の準備と着替えの準備をする。困った、こういう時に限って和服と巫女服がない。そういえば昨日、河川さんと蜂須賀さんがたまには手入れをと手入れに出してくれたのを思い出す。ため息をついて洋服を選び、お風呂場に向かった。

「あれ?主、今日は洋服なの?可愛い」
 そう私の周りをうろちょろしている加州さんにありがとうございます、と苦笑いする。
「昨日、蜂須賀さん達が手入れ屋に出してくださって」
「元から主、そんなに着物持ってなかったもんね」
「動きやすいのは洋服なのですが、和服の方が皆さんに馴染みがあるでしょう?」
「うん、それもそうかも。でも、洋服の方が主は似合ってる」
 笑みを浮かべて告げた彼に私はクシャクシャと彼の頭を撫でてしまった。照れ隠しである。
「主は厨房に?」
「食材をしたの彼らに分けないといけないので」
「あぁ、昨日来た奴らね。もー、主は優しいんだから」
 そんなことを話しながら光忠さんがいる場所に顔を出す。長谷部さんも小難しい顔をしていた。
「長谷部さん?」
「主、百歩譲って炊き出しは良いとしましょう。しかし、魔法はダメです」
「今更な気もするけどな、大将、長谷部の言う通りにしといた方がいい」
「わかりました。気をつけます」
「下にも料理できる刀剣はいるだろうし、手伝ってもらおうか」
「そうだね、それがいい」
 意見が一致したらしい厨房組に私は話が早いなぁと眺める。あとは皆今日は洋服なんだねとか似合ってるとか口々に褒めるので私は居心地が目を泳がせる。
「大将?」
「あんまり、そう言ったことを言われると、照れます」
 ぽつりと呟けば、彼らは顔を見合わせて笑った。少しムッとしてしまったのは仕方がない。大将、違う違う、と薬研くんが手を振る。蜂須賀さんがクスクスと笑った。
「主が年相応に見えたものだから」
 その言葉に私は目を瞬いたのだけれど。


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