白い魔女と本丸(3)
あの世界ではケアルは当たり前のように使っていた。なにせ、はじめて覚えたのがホーリーとケアルの二つである。よく喧嘩をする兄弟子達の手当てを、または自分の手当て、街の子供達の手当てなんかよくしていたのを思い出す。しかしながら、怪我は治せても病気は治せないし命を失ったものを生き返らせることもできないのだ。それはこの世界においても同じだった。私の髪色を美しいと言ってくれた人。怪我を治すことはできても、命を取り戻すことはできなかった。しかしながら怪我を治す私をみて、父母の目は得体の知らない物を見る目になった。では、彼らはどうなのだろうか。
そっと最後の人の傷を治す。随分と楽になった呼吸をみて私は息を吐いた。
「貴方は何者なんだ」
そう誰かが呟くように尋ねる。私は苦笑いを浮かべるだけだ。
「私は私です」
昔からの返答である。一部の人は私を魔女と呼ぶ。魔法が使えるのだから間違いはない。
「まぁ、貴方が何者であれ僕らには関係ありませんがね」
そう薄ピンクの髪を靡かせた彼は告げる。周りの視線が彼に向く。
「なんだって今更でしょう」
彼は小さく告げる。薬研くんが私を見上げた。
「大将、手入れの前に休憩するか。体さえ治っちまえば事はせかねぇしな」
そう促した薬研くんに私は素直に頷く。流石に何度もケアル系統の魔法を使うのは疲れる。こっちだ、と手招いた彼に私は続いてその広間を後にした。
「ありがとうな、大将」
日の当たる縁側で彼はそう告げた。温かな陽射しに私がうとうとと眠りの狭間を行き来している時である。私は緩やかに目を開くと彼をみた。
「私にとって当たり前のことをしただけだよ」
私はそう言って庭をみた。いつのまにか綺麗な花が咲いている。少し冷たい風に揺られて花弁が舞う。
「お礼をいうのは私の方かもしれない」
「そりゃどういうことだ?」
彼の発言に私は目を伏せた。
あの世界でマスターは私に告げた。私は異端だから世界に馴染めないのだと。兄弟子の一人はいった。ならば、一緒にきてしまえばいいと。それが寿命を縮めることだと知りながら私は頷いたのだ。
「異端の私を受け入れようとしてくれてありがとう」
そう緩やかに微笑む。彼はただ目を瞬いただけだったけれど。
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