SQUELCH!!


白い魔女と本丸(4)




 手入れの次は内番を。内番の次は遠征を。そうして溜まった資源で少しずつ刀を手入れする。それを繰り返していれば刀達のほとんどが体も刀身も治っていた。あとは心かもしれないが、それに近道などはない。風に乗って海の香りがする。本丸は主様の記憶に基づいて形成されます。こんのすけがそう告げたのはいつのことだっただろう。ならばこの変わりつつある景色は私のいつの記憶に基かれているのだろうか。
「主は海の近くに住んでたの?」
 そう私をみた浦島くんは私をみる。私は素直に「ううん」と首を振った。
「街のど真ん中。でも、海に面した街に住んでいた記憶はあるの」
「へぇ、どんな街?」
「朝霧に覆われた街でね、大きな時計塔があるんだ。私はその大きな時計塔の中に住んでるの」
「時計塔?」
「そう。海外のビッグベンが近いのかな。時計塔からは町も海も見渡せた。そこが大好きでいつもそこにいたの」
「へぇ、だから潮の香りがするんだな」
 浦島くんはそう言って「でもよかった」と呟いた。何がよかったのだろう。
「主、竜宮城から来たんじゃないかって思ってさぁ」
「竜宮城?」
「そ、浦島太郎にでてくる海の中にあるお城」
「海の中にあるお城かぁ。きっと綺麗なんだろうなぁ」
 そう言って後ろに体重をかければ後ろにいた誰かにぶつかった。慌てて振り向けば長谷部さんがいる。今日はもうこなす分は終わったよなぁと思っていれば長谷部さんが困ったような笑みを浮かべた。
「主、少しお話があります」
「わかりました。じゃあ、浦島くん、またね」
 ひらりと手を振れば彼もまたひらりと手を振った。私はそのまま長谷部さんに続きとてとてとやってきていたこんのすけを抱き上げる。足取りが何故か遅い長谷部さんに並んで廊下を進んだ。

 執務室に入るとこんのすけはぴょんと私の腕から降りた。そうして私の対面に座る。
「主様、そろそろ出陣・鍛刀をいたしましょう」
 そう告げた彼に出陣・鍛刀とは?と首をかしげる。こんのすけはタブレットを私に持ってくるように告げた。私はそれに倣ってタブレットを持って彼に近寄った。
「鍛刀とは新しい刀を作ること、即ち仲間を増やすことです。稀に珍しい刀も出現いたします」
 珍しいも何も刀は全て珍しいと思うのだけども。そのあとも話を聞けば資材を結構使うらしい。手入れの分に置いておきたいのだけども。
「鍛刀されてみますか?」
「先に出陣の話を聞きたいな」
 そう促せばこんのすけは頷いて口を開く。出陣とは刀剣男士を他の時代に送り込むこと、らしい。審神者によってピンポイントの時間に送り込むことができる人もいれば数日前の時間にしか送り込むことができない人もいるという。
「前の審神者様は数日前の時間にしか送り出せませんでした。前者ができるのは審神者の中でも一部のものでしょう」
「ちなみに私がついていくというのは?」
「なっ、……いけません、主様。時間を超えることができるのは刀剣男士のみなのです」
 やはり時間を超えるのは禁忌か。そう考えていると、こんのすけがまた口を開く。
「出陣することにより刀がドロップすることもございます。珍しい刀もね」
 珍しい刀はどうでもいいのだけど。目をパチパチと瞬いておく。こんのすけは慣れたようにタブレットの画面を変えた。
「それでは主様、まずは部隊を決めましょう。一番隊から四番隊までを指名し、時代に送り込むのです」
 では、私は政府に呼び出されておりますが故。
 それだけ告げてこんのすけはとてとてとすこし歩いて消えた。残った私はタブレットをみる。とりあえず何が何だかわからないため、タブレットを見れば今いる刀剣の横に練度と書かれた文字を見つけた。はて、練度とは。そう首を傾げていれば、長谷部さんがやってくる。
「どうされましたか?」
「練度ってなんですか?」
「我々の強さの目安の値です。しかしそれらには刀の種類の補正もつきましょう」
 なるほど、と思いながら触る。普段作っている刀装は刀剣達に持たせるものらしい。その他長谷部さんは色々説明をしてくれる。
「なるほど、じゃあ、バランスを考えてなるべく練度は均等に……刀種も偏らないように……」
 とりあえず今いる刀を種類や練度別に書いていく。それを並び替えようとした後で、気づいた。
「あれ、でも練度が高い刀を低い刀と出陣させた方がいいんですか」
 長谷部さんに伺えば目を見開いたまま止まっている。首を傾げていれば、通りがかった御手杵さんが私をみる。
「お、主、出陣すんのか」
「はい、こんのすけがしろというので。今は隊を決めようと思って長谷部さんに相談を」
「相談?適当でいいだろ?」
「えっ」
「前はそうだったぞ。うーん、でも、そっか、ナマエは違うもんな」
 彼は近寄ってきて私のそばにしゃがんだ。私が纏めていた紙――というか単語帳をばらしたような紙――を眺めている彼は「どうしたいんだ?」と尋ねた。
「刀種をできるだけばらそうと思うんです。そうすればお互いフォローに入りやすいし」
「まぁ、そうだな。俺も正直脇差がいた方が助かる」
「でも、練度を揃えた方がいいのか、練度が低い人の補助で練度が高い人をつけた方がいいのか分からなくて」
「あー」
 ひょいっと彼は自分の紙をとって一番上におく。そうしてひょいひょいと他の刀剣をチョイスしていく。
「俺は面倒見る感じじゃないからなぁ。練度低い奴と一緒に出陣させるなら、一つの隊に一人にするか大太刀薙刀と出陣させるのがいいと思う」
「何故?」
「あいつら攻撃範囲広いんだよ。場合によるけど一気に二振りは倒しちまうから」
「なるほど」
「あと、出陣が嫌いな奴も怖い奴もいるからなぁ」
「御手杵さんは?」
「俺は慣れてる。よし、できた。他の奴らに声かけてくるし、今回は俺たちだけにしといてくれ」
「わかりました。刀装選んでおきます」
「おー」
 そう緩く告げた御手杵さんはそのまま部屋を出た。彼が選んだカードをみていると練度が同じくらいの人を集めてくれたようだ。ぼうっとしている長谷部さんを呼ぶ。こちらをハッとしたように見た彼に刀装について尋ねるべく私は口を開いた。



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