SQUELCH!!


白い魔女と黄色い勇者(2)



 刀剣たちを見ていれば本丸によってスタイルが変わるらしいというのがわかった。頻繁に本丸と連絡をとっている刀剣もいれば、取らない刀剣もいる。写真を撮って自慢してる、とはどの刀剣の言葉だったのだろう。鶴丸さんの主さん――どうやら蘇我さんというらしい――からは「なんで鶴丸達がいちばんバカンスしてるんだ」という返事が来たらしい。他の本丸の燭台切さんとこの本丸の光忠さんと歌仙さん、蘇我本丸の小豆さん――料理の腕に自信がある刀剣達があのレストランのあとを利用して、レストランの真似事をしている。昨日加州さん達と覗けば結構な繁盛で、私の本丸の刀剣達も結局はそこで夕飯をいただいた。市場の地図も情報はあつまったのか長谷部さんは今日は部屋にこもって書き起こしてくれるらしい。完成が楽しみである。他の刀剣達に頼んでいた作業も手合わせもひと段落ついたのだろう。広場にある噴水に腰掛けてぼうっと周りをみる。心地よい風が花びらを連れて行くのがみえた。それを目で追っていれば、不意に隣に誰かが座ったらしい。
「主、大包平をどうにかしてくれ」
 うるさくてかまわん。
 その声に隣を見れば、鶯丸さんである。内番服のジャージではなく、出陣服を着崩しているのをみると手合わせでもしていたのだろうか。どうかしたのだろうか?と首を傾げてみたが、あぁ確か昨日風云々と大包平さんが言った気がする、と思い返す。
「勲章が緑色だからって、風で船を動かせだなんて酷いと思わないか」
「あーえーと、その原因は私にもあるような」
 そう言って私は目を逸らす。
「だがどうせ大包平が思い付いて主はできるかできないかを言ったんだろう」
 お見通し、らしい。なので私は素直に「はい」と頷いた。鶯丸さんはそれを聞いて肩をすくめた。
「風をどうこうと言われてもな、実感がわかない」
「うーん、風は目に見えるわけじゃないですもんね」
 そう言って手のひらに小さな旋風をつくる。ふわりとした風と共に分散した旋風は薄ら緑色を帯びているがそれは光の条件でとても見にくい時がある。
「今の風は主が起こしたのか」
「はい。小さな風であればこうやって起こすことができます」
「主は不思議だな。今のはどうやったんだ?」
 興味津々という風に鶯丸さんが私の手元をみる。どう、と言われても困る。これは感覚的なものだ。
「うーん、私も教わった時……昔は風に直にお願いしてたんですけど」
「直にお願い?」
「偶に私が『風よ』とか『光よ』とか『炎よ』って言いながら使うでしょう?」
「あぁ」
「あれはその時の名残なんです。風を使おうとして周辺を凍らせたり、炎をつけようとして水浸しにしたり」
「それは……散々だな」
「でしょう?なので、直にそれらの力にお願いするようになりました。そういう魔法は自然あっての魔法ですから」
「だろうか。俺たちの勲章に宿っているものも、自然あっての魔法ということか」
「はい」
「ふむ……」
「……手を貸してみてください」
 そういえば彼は手をだす。私はその手の下に自分の手をおいて、「風よ」と言う。鶯丸さんの手のひらに薄緑色の風の渦が巻いてそれは消えた。手を離して、やってみてください、と言えば彼は手のひらをひらいて「風よ」と呟いた。薄緑色の風の渦ができて、それは微かな風と共に消えた。鶯丸さんの周りに桜の花びらが舞う。魔法が使えて嬉しかったんだろうか。
「……もっと大きな風も吹かせられるのか?」
「慣れたらできると思います」
「あぁ、でも大きな風が吹けば花を散らしてしまうか。それはそれで惜しいな」
 彼はそう言って少し嬉しそうに両の手を見つめた。私の視線に気づいたのか彼は困ったように笑って見せた。
「だが船を動かせる気にはなれないぞ」
「まぁ、それはそれだと思いますよ」




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