SQUELCH!!


白い魔女と黄色い勇者(4)



「メンテナンスの目処が立ちましたので、ご報告です」
 穏やかな日が続いたある日だ。こんのすけがもってきた書簡を読み上げる。どうやら明日の朝にはゲートのメンテナンスが終わるらしい。そのことと手入れ資材が届いたことを刀剣達や他の本丸の刀剣達に伝えれば、最後だし折角だからパーティーしようということで話がまとまった。厨当番の彼らは腕すぐりの料理を作ってくれるらしい。楽しみである。短刀達がアイスキャンディーを食べたいらしいので私も刀剣手入れが済み次第作るつもりだ。
 こんのすけと大包平さん達と手際良く手入れをしていく。蛍丸くんの手入れ時間をみて、本当に大太刀だったのか、と納得したり、三日月さんのうちよけをみせてもらったり。そうこうしていれば、獅子王さんに「なぁ」と声をかけられた。そういえば彼の隊は遊びたいからと手入れは後回しである。啀み合っている――というよりは大包平さんが一方的に敵視しているのだが――大包平さんと三日月さん、他の本丸との間に入ってくれていた鶴丸さんももまた彼をみる。
「どうかしましたか?」
 そう尋ねれば彼は目を少し泳がせたあと、何か決心したように口を開く。
「アンタに頼みがある」
 その様子に私は首をかしげる。
「どうかしましたか?」
「あぁ、短刀達をこの本丸で預かって欲しい」
 彼の発言に私は「えっ」と声を上げる。三日月さんは目を瞬いて、鶴丸さんも「どういうことだ?」と興味津々に尋ねてきた。獅子王さんは顔を伏せた。
「どうもこうも、ない……というか……」
「何かありましたか?」
 私は彼の顔を覗き込みながら尋ねる。彼は心底困ったような顔をしている。大包平さんが彼を見下ろした。
「審神者から無理強いされてるのか?」
「無理強い……っていうのかはよくわかんねぇけど。あいつらがあんな表情をするなんて 思ってなかったから……きっと戻りたくないと思う」
彼は困ったようにそう告げた。三日月さんが、問いかける。
「獅子王、包み隠さず話せ。俺たちの本丸はそういうものを対処できる本丸だ」
「おっとこりゃ大変なことになってきたな。俺たちも協力する」
 鶴丸さんはそう言って端末を触る。そういや、獅子王さんはあまり端末を触らなかったなと思う。連絡をとりたくなかったのだろうか。大包平さんが獅子王さんの肩を掴むと彼に目線を合わせて口を開く。彼の肩にいつもいる鵺は私の肩に飛び乗った。
「獅子王、言え」
「言えったって、何を。あれは俺たちの普通なんだから言えることなんか――」
「その普通が普通じゃないことなんてわかってるんだろう」
「……」
「……俺たちもそうだった。今の主に変わってこんな生活になってはいるが、前は酷いものだった」
 大包平さんの言葉に獅子王さんは瞳を揺らす。でも、その瞳には諦めの色がすぐにさした。
「……それは運が良かっただけだろ?」
「違う!」
「何が違うんだ?……それに、きっと何も変わらない」
「……それは違います、獅子王さん。変えられないんじゃないんです。変わらないじゃないんです。自分達で変えるんです」
 そっと彼の手をとる。彼は私をみた。
「貴方達が変わりたいのであれば、私達はお手伝いします。三日月さんや鶴丸さん達もきっと手伝ってくれるはずです。大丈夫」
 呪文のように繰り返す。大丈夫なのだと、彼がちゃんと理解するまで。優しく、あくまで穏やかに。
「大丈夫です。きっと、誰も酷い目にはあいません。大丈夫」
 ね、と笑いかける。彼はそれに緩やかに目を伏せた。そうして、何かを決したように目を開く。
「俺たちを助けてくれ」
 そう勢いよく頭を下げた彼に、私も三日月さんも大包平さんも「もちろん」と笑いかけるのだけれど。



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