SQUELCH!!


白魔女とご近所さん(1)



 お隣さんとお隣さんのお隣さん、すなわちご近所さんとバーベキューである。一応手ぶらで行くのは申し訳ないため食材――持っていく海鮮はたくさんとれたので、あとは服だろう。同じ刀剣がちらほらいるからとわかるような印をつけるか服を着て欲しいとはお隣さんの頼みである。どうやらいつもは出陣服と内番服で区別しているらしい。ふむ。魔法でどうにかするしかないかと思ったが洋装しか私はわからないわけで。
「うーん」
「主、どうしたの?」
「バーベキューの時、出陣服でも内番服でもない服を着てきて欲しいって言われたんだけど、魔法でつくると洋装になってしまうしなぁっと」
「それってシンデレラの魔法みたいにってこと!?」
「うん」
 確かにそうであるため頷く。乱ちゃんはぱぁっと目を輝かせた。眩しい。やってみて! と告げた乱ちゃんに魔法をかけるとする。指を指揮するように一振り、二振り、三振り目で星屑のようなキラキラしたものが彼にまとわりついた。そうしてそれが散ると服が洋装になる。彼は感激したように服を摘むとくるくると回って見せた。
「素敵な服! これでお出かけできるの!?」
「でもバーベキューだし、匂いがついちゃうかなぁ。もうちょっとアウトドアに適した方がいいのかなぁ」
 そう考えて考えて、短刀はいつか資料で見たボーイスカウトみたいな格好でいいかな? ともう一度指を振る。そうしてボーイスカウトのような少年セーラーのような服に今度は変わる。こっちも可愛い! と言った彼に、じゃあこれにしようか、と笑いかける。
「さっきみたいな服も着たいなぁ」
「うーん、また機会があればみんなで集まってパーティーか何かしたいね」
「やりたいやりたい!」
 その時は魔法を奮発しよう、と思う。昔のように海の上に氷のお城をつくったり。そう考えていれば、みんなにこの服見せてくるね! と告げた彼は部屋を出て駆け出した。さてはて、明日までに魔法を調整したいところである。

 とりあえず、内番服ではなく出陣服の鎧などを外した状態で待機してもらう。一変に魔法をかけるかと思ったが一人もしくは数人ずつ魔法をかけて欲しいようなので何回かにわけて魔法をかけた。粟田口がそのままボーイスカウトである。とりあえずお隣さんにつながる扉をキーブレード で開けてしまえば、お隣の鶴丸さんが目を瞬いた。その近くにいた知らない刀剣は動きを止めた。
「すごいな!! 何もないところに扉が現れた!! 君の本丸は本当に驚きが絶えないな!!」
「ええっと、こんにちは、鶴丸さん。審神者さんは?」
「あぁ、庭で準備してる」
「庭……つなぎなおしたほうがいいかな?」
「いや、すぐそこだから気にしなくていいさ」
「ふむ……あっ、食材はどちらに運べばいいですか?」
「庭に来てくれ、うちの光忠達がいるからな」
 そう言った彼は伝えてくるとバタバタと駆け出した。私はとりあえず固まったままの刀剣に頭を下げる。そして自分の本丸をみた。
「食材は庭のお隣の光忠さんに渡せばいいみたいです。私は先に審神者さん達へ挨拶に向かいます」
「主、また一人で行くと大包平や長谷部にどやされっぞ」
 ひょこりとビンが入った木箱を持った御手杵さんに、じゃあ一緒にきてもらえますか? と尋ねれば彼はおうと頷いた。和風の建物の外側をぐるりと周り庭に向かう。和風の庭、すなわち日本庭園である。素敵な景趣にわぁ、と声をあげればそこにいた何人かの刀剣達がこちらをみた。周りを見渡した御手杵さんは、いたいた、と声を上げる。
「おーい、となりの審神者と鶴丸ー」
 そう手を振った御手杵さんの視線の先をみる。まぁ、背の高い刀剣男士が何十人もいるのだ。私は見えない。とりあえず、そちらに向かえばいいのだろうか、と思っていれば、お隣の山姥切さんがやってきた。
「隣の……白百合殿か」
「白百合?」
「? アンタの名だと聞いたが……」
 首を傾げた山姥切さんに、私も首をかしげ――あぁ、と手を叩いた。そういえば政府の役人さんが定家本丸の審神者さんが私に号を贈ってくれたということを思い出す。それが白百合だ。したがって白百合本丸が私の本丸を指すようにならしい。私を見下ろした御手杵さんに、白百合という別の名をいただきました、といえば納得したようだ。
「ごめんなさい、つい最近のことだったので」
「いや……うちの主も昔はそんなだった。気にするな」
「白百合ー、隣の御手杵ー、この前ぶりって……でっけーボーイスカウトだな。こんな服持ってたのか?」
「主が……つくった」
「つくった!?」
「服装が被るといけないと聞いたので……」
「ってことは、全員分つくったのか!?」
「すぐに用意できたのでお気にせず」
 そう苦笑いする。いやいやいや、と首を振った彼に同じくやってきていた鶴丸さんが何かを理解したらしい。
「なるほど、アレか!」
「うーん、多分想像してるもので正しいとは……あ、えっと、この度はお招きいただきありがとうございます」
 挨拶を忘れていたと慌てて軽く頭を下げる。お隣さんは「良いっていいって」と首を左右にふった。
「他の人が食材を持ってきてくれるのですが、用意できるのが海鮮しかなくって」
「充分だと思うぜ? 御手杵が持ってるそれはなんだ?」
「収穫したフルーツで作ったジュースと、サイダーとジャムです。お酒もないので」
「あぁ、未成年で酒飲みもいなさそうだもんな。内番服きてんのがうちの本丸の奴らだから何かあったら内番服きてる奴に言ってくれ。さっきから白百合凝視してる出陣服きてるやつらは逆隣の本丸の刀剣」
 その言葉に一応ぺこりと頭を下げておく。余計に固まってしまった。
「あー気にすんな、多分白百合くらいの女の子に会ったことがないんだろ」
「ちらほら演練でお見かけするような……?」
「あいつらは古参で演練のレベルが違うからな。別会場なんだよ。そうなると白百合くらいの女の子はいないんだよな」
「ふむ、だから同じ刀剣でも違う服装の方がいらっしゃるのですか?」
「あぁ、それはそのうち白百合のところの刀剣もそうなる。おーい、爺さん、こっちだ」
 そう声をかけたお隣さんに、刀剣達が道を空けた。和服に身を包んだ老年の男性が見える。
「蘇我の、そちらが?」
「あぁ、逆隣の新しい審神者。白百合」
「白百合と申します。よろしくお願いします」
 私は頭を下げる。
「鷹司だ。ふむ、清らかな霊力だな」
「定家さんと同じ意見もってやがる」
「む? 定家と会ったのか?」
「あの休暇中に色々あったんだよ。そういやお隣さんは最近白百合って号ついたよな。誰にもらったんだ?」
「定家さんにつけていただきました」
「ほう、ということは定家はお主を引き込むつもりだろう。清らかな霊力は確かに魔を相対するにはいいだろう」
 その言葉に首をかしげる。お隣さんが「まぁなぁ」とあたまをかいた。
「号を贈るとは、名付け親のようなもの。師弟になることで贈られることは多い」
「ま、白百合の場合は協力してもらう関係でつけたんだと思う」
 なるほど、と納得していればお隣のお隣、鷹司さんは私をみた。
「私の刀剣は出陣服をきている。白百合には……まぁ格好はつけるだろうが害は与えんだろう」
「ははは……」
「?」
 首をかしげれば、鷹司さんは刀剣達に呼ばれてさっていく。ふむ、かっこいいおじさまである。同じくそちらをみていた御手杵さんが「おっ」と声を上げた。そうして私を見下ろした。
「主、他の奴らもきた」
「主ー、食材持ってきたぞ」
「! はーい、蘇我さん、光忠さんに渡せと聞いたのですがどちらに」
「光忠――!! 白百合本丸が海鮮もってきたぞ――!! 食材追加――!!」
 その声に光忠さん達が「なんだって!?」と声を上げるのが聞こえた。



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