SQUELCH!!


白魔女とご近所さん(2)




 縁側に座って休憩する。みんな出来上がりつつあるのがすごい。私の本丸の一部もお酒を飲んでいるらしい。ふむ、たまにはお酒を飲むのもいいかもしれない。魔法でぶどう酒とか果実酒を作れないだろうか。ぼんやりとそう考えていれば、なぁ、と声がかかる。そちらを見ればはじめましてな刀剣男士がこちらをみていた。
「アンタの飲んでるそりゃなんだ? 酒か?」
「いえ、お酒は飲めないので。ジャムを炭酸で割ったものです」
「ジャム?」
「ええーと、ジュースです。いちご味の」
 そう答えれば彼はヘェとじっとみた。それに少し笑う。
「飲みますか? 作りますよ」
「いいのか?」
「はい。いちご味とマーマレード、ブルベリーがあります」
「どれも聞いたことねぇな」
 瓶を並べれば彼はそれを子供のようにじっとみる。私は近くにあった綺麗な小皿にジャムをのせる。
「先に食べてみますか?」
「すごい色だな……」
 そう言って彼は恐る恐る指先をつけると舐めた。目を輝かせてうまい! と言った彼は子供みたいである。吟味した彼は最終的に「いちごのにしてくれ!」と声を上げた。私は頷いてジャムをスプーンですくってコップに入れると炭酸水を注いだ。そしてマドラーでかき混ぜる。実はこれは事前に用意した解けない氷のマドラーで冷やすには持ってこいなのだ。よく混ざったのを確認し彼に渡す。受け取った彼は口をつけると、うまい! とまた声を上げた。
「兼さーん、何してるの?」
「おー、国広! 隣の隣の審神者にジュースもらった! ……ありがとな!」
 彼はそのまま他の刀剣に合流した。うーむ、短刀達とレモネードやジュース、アイスキャンデーを売る遊びをしてもいいかもしれない。今度試しにお隣さんの家に押し売りに行ってみよう。

「このマドラー、あの花と似た術式で作られてるけど、やっぱり意味わからん」
 マドラーを摘みながらそう告げたお隣さんに怪しいものではないんですけどね、と苦笑いする。お隣さんの光忠さんと鷹司本丸の光忠さんが欲しいというので非売品なのだといえばこうなった。お隣の光忠さん達は理解したのだろう。
「溶けないけど割れるっていうあの氷の花と同じってこと?」
「そうだ。でも訳がわからん。そういう術式だというか……東洋ではない。ジジイ、なんかわかるか?」
 そう言ってお隣さんは鷹司さんにマドラーを渡した。それを太陽に透かしてみせた彼は、ふむ、と考えこんだ。
「悪いものではないようだ。あとは東洋の術式じゃない。西洋のものだろう」
 鷹司さんはそう言って宙に浮かべる。おぉ、と思っていれば、彼が何か札を取り出してマドラーの近くに浮かべた。すると文字が走る。わぁ、と声を漏らしてしまったので慌てて口を塞ぐ。鷹司さんは眼鏡をかけて私には何が書いてあるかわからないものを見た。お隣さんは口端をひきつらせる。
「こっちはこっちで意味わかんネェ東洋式だしな」
「陰陽だ。教えたはずだが」
「ここまではむりだっての」
「精進せよ。……俺がみた中で該当するものは西洋の中世以前のモノか……下手したら西暦以前の理論の可能性もある」
「魔女狩り以前ってわけね。でも魔女って全員魔女狩りにあっただろ?」
「西洋ではそう伝えられているな。だが、抜け道というものもある」
「抜け道?」
「魔女の先祖返りだ。陰陽の先祖返りがいるならなんらおかしくもないし、言い伝えがちらほら残っているだろう」
 そう言って鷹司さんは眼鏡を外して私をみた。先祖返り? と首をかしげる。お隣さんは首を傾げた。
「言い伝え?」
「あぁ、御伽話としてな」
「シンデレラとかか?」
「あぁ、似たようなものだな。ただ、それより時代は遡るときく。あまり西洋では――まぁ宗教の都合もあるのかもしれないが、残っている文献はすくない。それこそあらすじ程度だ。姫に一目惚れした王子が魔女に姫の理想の姿にするよう頼んだら犬になった、だとか、伴侶をなくした魔女が伴侶を木に変え自分をその木にさく花にした、だとか、国で管理していた良い魔女が一角獣に連れられて消え去った、だとか」
「ふふっ……」
 そうクスクス笑ってしまう。イラ兄様が一角獣なのはまとを得ている。彼は一角獣の仮面をつけていたのだから、正解である。どうやら私も他と同じく御伽話の世界にいるらしい。
「白百合?」
「いいえ、色々な話があるんだな、と」
「して、白百合。どう作った?」
 鷹司さんの質問に、大包平さんが主と睨みをきかせた。魔法を使うなということだろう。なので苦笑いして人差し指を口元にたてる。
「秘密です。話すとみんなに怒られてしまうので」
「ん゛」
「え?」
 変な声が聞こえたのでそちらを見る。出陣服をきた人の一部が顔を覆った。なんだ? と首をかしげる。気にするな、とひらりと鶴丸さんが手を振ったのが見えた。光忠さん達を見上げて首をかしげる。
「マドラーは今つくるとおこられますので、もしよければ後日お持ちしましょうか?」
「いいのかい?!」
「はい、私はかまいません」
「いくら出せばいいかな?」
「お金は結構ですよ」
「だめだよ。君がよくてもね。ちゃんと対価を払わせてほしいな」
「なら、短刀達とお店屋さんごっこしに伺っても?」
 そう尋ねれば、私の本丸の短刀達がわぁとこえをあげた。それをみてか出陣服をきた光忠さんが顔を覆った。
「なんだろう……うちの短刀部隊と全然違う。すごい可愛げがある。花が飛んでそう」
「爺さんとこあくまで主従だもんな。俺んとこも可愛いだろ?」
「蘇我くんのところは全体的に君に似て悪ガキっぽいからね」
「それって僕も含まれてる? 結構心外なんだけど」
「まぁ俺んとこはあくまで男子高みたいなノリだからな」
 蘇我さんは私をみた。
「お店屋さんごっこって何を売りにくるんだ? バトラーみたいなものか?」
「いえ、レモネードとかジュースとか……アイスキャンデーとか?」
「あぁ、外国の子供が小遣い稼ぎしてるやつみたいなものか」
「はい、本丸の中でもたまに遊んでるんですけど」
「私は別に構わん。刀剣達も暇をしているからな、付き合ってやれるだろう」
「爺さんとこはカンストしてるもんな。俺んとこもかまわないぜ」
「では、また押し売り? に参ります」
 ちなみに、たまにガチで有用なもの売ってるけどなんなの? と言われることになるのだが、私は知らないことである。



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