失われた魔法のお話
「すまない、白百合。どうしても君の話を聞きたくてだな」
蘇我本丸の審神者さんが消えたと思ったら役人さんと定家本丸の審神者さん、三日月さんを連れてやってきた。なんだろうか? と首をかしげる。定家さんは鷹司さんを見て目を瞬いたが。
「まだご隠居していなかったんですか、鷹司殿」
「ははは、まだそこまで歳を重ねておらんわ、定家。して、休暇の、私たちに、何か用かな?」
「……仲が悪いんですか?」
「定家さんの師匠が爺さんの同期で悪友らしい」
なるほど、色々あるらしい。とりあえず役人さんと三日月さんにはレモネードを渡しておいた。定家さんはお酒を渡されているからいいだろう。定家さんはお酒を受け取ると一口のむ。そうして私をみた。
「君の刀剣達が持つ力のことだ。恐らくは君からうつったのだろうとは思うのだが」
さて、どう答えたものか、と考える。しかしながら、私が答えるより先に鷹司さんが口を開いた。
「……聞いても我らでは理解できんよ、彼女の力は東洋ものではなく既に失われたとされる西洋のものだ」
さらりと告げた鷹司さんに私は目を瞬く。
「刀剣達がつけているブローチから彼女の力が感じられる。恐らくその力と刀剣のもつ霊力が呼応し何かを引き起こすのだろうとはおもうが」
「……既に失われたモノとは?」
「彼女の持つ技術は西洋の中世以前、下手をすれば紀元前のものだとも考えられる。世界で多神教が信仰された時代のものであり、一神教に切り替わって以降全てを禁じられ滅されたもの。――時が立つにつれ御伽話へと昇華されたものだ。我らの考え方に近しいが違うものだ」
鷹司さんの言葉に少し考えた役人さんは口を開く。
「彼女が扱うのは今なお痕跡がある錬金術や魔術ではなく彼女のあつかうものは魔法だと?」
魔術や錬金術、は聞き慣れないものである。はて、と首をかしげる。魔術と魔法はどう違うのだろうか。錬金術は金か何かを作り出すのだろうか。
「詳しいな、長義」
「これでも少しは調べました。彼女は俺の担当の一人なのでね。彼女の刀剣に関する報告は俺にきますし、彼女の本丸は日本のそれではない。知るには海外のものを漁った方が早いと踏んだまでですよ」
「錬金術や魔術と魔法はどう違うのですか?」
私が伺えば彼らは私をみた。しばらくの沈黙ののち、ふは、と息を吐いたのは鷹司さんである。
「魔術も錬金術も理論がある。西洋における人間の学問の発展系だ。使えるものはもう滅多にいないがな。魔術の上位互換を魔法だというものもいるし、科学は魔術だというものもいる」
「魔法ではなく魔術を使う人達は迫害を受けなかった?」
「いいや、魔法が滅んだ後に魔術ができた。中世に行われた魔女狩りによって加害を受けたほとんどが魔術師や錬金術師だったとの一説もある」
「そもそも、どうして人々は加害を?」
「時代に限らず、あまた大勢とは違うものは迫害されやすいものだ。それが良いものであれ悪いものであれ。見えぬものは理解されにくく、そしてあまたの人間がわからないこともまた理解されないものだ。審神者の多くはその立場なのだ。だが、その弱者の中でも同じようなことがおこる」
そう呟くように告げた鷹司さんに、眉尻をさげる。そんなことがおこってほしくなどない。恐らく何処かの段階で妖精達は見切りをつけたのかもしれない。お隣さんが口を開いた。
「白百合の本丸自体が迫害される可能性があるってことね」
「だが、白百合の本丸が閉ざされてしまえばこちらは生まれざるモノへの対処ができなくなるだろう」
「なんだと?」
「彼女とその刀剣達は生まれざるモノを倒すことができる」
「定家殿、そんな報告は上がっていないが……」
「ワザとあげていない。そんなものあげてしまえば彼女は政府のおもちゃになる」
「俺は政府の役人なわけなんだが」
「あぁ、だから黙っといてくれ。長義、お前はどうせ言わないだろうと思うが」
その言葉に役人さんがため息をついた。
「白百合の力を我らが使えればとおもったんだが」
ちらりとこちらをみた定家さんにうーんと考える。刀剣達が魔法を扱えるのは私の魔力、すなわち霊力の関係だと思うのだ。それ以外となると、どうなのだろうか。私は妖精達に教えてもらったし、力の源みたいなものがあるからとも言われた。別の例では魔法使いに教えてもらうという話もある。確か、一度だけ時空を旅する彼と会ったことがある。しかし、彼が訪れる確率はかなり低いだろう。あとは、キーブレードを扱えるようになるか、という話だろう。うーむ、と考えていれば、蘇我さんが口を開く。
「そもそも、どうやってるのかわからなかったら力の譲渡もできないッスよ」
「異国の力を我らが使えるかもわからないしな」
鷹司さんはそう言って酒を呷った。
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