SQUELCH!!


白魔女と聖夜(2)



 ショーケースに張り付いているのはお隣の小豆長光と謙信景光、そうしてその主君であるお隣さんとその初期刀である山姥切である。ナマエの本丸の燭台切と加州清光、同田貫はもうケーキを決めて席に座っていた。
「ひゃー、全部美味そうなんだけど」
「ここまでのけーきははじめてみたな……」
「まようぞ……」
「洋菓子屋さんがあるなんて知らなかった」
「白百合殿、よくみつけたな」
「たまたまです。店先にクリスマスツリーが見えて」
 ナマエはそう言って苦笑いをした。偶然だ。クリスマスツリーが見えなければ見つけていなかっただろう。
「クリスマス?」
「あー、もうそんな時期か。俺も審神者になってからクリスマス祝ってないからな。そもそもこの界隈にそんな文化ないし」
 ケーキを眺めながらそう言ったお隣さんに、クリスマスを祝うとは? と刀剣達が首をかしげる。西洋式の仮面をつけた男性――洋菓子本丸の審神者はケーキセット――フルーツタルトにプリンアラモード、アップルパイと紅茶を机に並べながら口を開いた。
「あー、やっぱり君のところもかい?」
「そうなんスよー、まぁ師匠にあたる隣人は祝っても良いみたいな感じなんでチキンだけ食べたりしてましたけど。この街ハロウィンやクリスマス通り越してもう年末年始っスからね。そもそも誕生日当日じゃなくて年始にみんな年をとるかんがえかたっしょ」
「そうなんだよねぇ」
 参った、というふうに洋菓子本丸の審神者は肩をすくめた。洋菓子は記念日などに需要が多くなるのに対し、記念日が少ないからだろうか。山姥切がお隣さんとナマエを見ながら口を開く。
「クリスマスってなんだ?」
「他の国の神様の誕生日を祝うんだよ」
「サンタクロースというおじいさんが空飛ぶソリにのって良い子にプレゼントを配るんですよ」
 お隣さんとナマエの答えに刀剣達が首を傾げる。二人の証言が同じ日には聞こえない。
「サンタクロースが他の国の神様なの?」
「いや、サンタクロースは一年間子供が良い子でいるように宥めるための文言だよ。悪いことをすると鬼が出るぞ的な。現実にはいない」
「えっ? サンタクロースはいますよ?」
「えっ?」
 パチパチと目を瞬いたナマエに、お隣さんも驚いたように目を瞬く。その様子に洋菓子本丸の審神者は「いる」と即答したが。
「汚い大人には見えないし、両親が仲介業者してたりするけどサンタクロースはいるよ。フィンランドあたりに」
 うむうむと頷いた洋菓子本丸の審神者に、ナマエははいと頷いた。世界のどこかにはクリスマスタウンがあって、サンタクロースがいるのだがそれは秘密のお話だ。
「まぁ、多くの日本人にとっては家族や友達とパーティーをしたり、恋人とディナーを食べる日かな。是非ともケーキをお供に!」
 そう言った洋菓子本丸の審神者にナマエは首をかしげる。
「注文すればケーキを作っていただけるんですか?」
「作るさ。それが審神者と兼業してる僕の仕事だから。大人数用のケーキだって作るし焼き菓子の詰め合わせだって作るよ。もちろんクリスマスケーキもね!」
 茶目っ気たっぷりにウィンクをしながら告げた洋菓子本丸の審神者に、ナマエが頷いていれば、こそっと乱がナマエに耳打ちをする。
「ねぇ、主、今度のお城のパーティー、クリスマスパーティーにしようよ!」
「それはいい案です! ケーキをお願いしちゃいましょう!」
 秋田の言葉を聞いてナマエは頷く。ナマエもそのつもりだったのだ。
「帰ってみんなに相談しましょう」
 ナマエの言葉に一期一振も頷いた。
「ええ、そうですね。我々だけで決めるわけにはいかないかと」
 コソコソと話すナマエ達に、仲良いなぁ、とお隣さんと洋菓子本丸の審神者は呟いた。



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