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「そういや、達海監督、蓮に伝えましたよ」
「蓮?」
「持田」
「ああ……アイツ蓮っていうんだ。何時?」
「東京ダービー前。たまたま会いました」
そう言いながらポイポイと達海監督の着替えを彼のベッドの上に投げる。私は有里さんほどお母さんではないのだ。ちなみに彼の朝食は有里さんが準備している。良妻感が半端ないな。
「仲直りできましたよ」
「……そうかい」
「ありがとうございます。多分達海監督に言われなかったら逃げてたと思うので」
とどめにタオルを彼の顔目掛けて投げる。まぁキャッチされたが。こちらをみて「もっと揺さぶれると思ったのになぁ」と達海監督は意地悪な顔をした。私はケラケラ笑う。
「ないない。結局アイツは我が道しかみない王様タイプですもん。椿くんやハナちゃんとはメンタルの方向が違いますしね」
ノロノロときがえる彼に羞恥心はないのだろうか。いや、私もここにきて半裸を見慣れた感じはするからどうってことはないのだけれども。
「ハナちゃん?」
「花森圭悟」
「あぁ、アイツね。すっげーあだ名で呼ぶね」
「ハナちゃんはこう……十年前は可愛いかったので」
今はどうだか知らないですけど。そんな会話をしていれば私の名を呼ばれる。有里さんがサンドイッチ買ってきますから、とだけ告げてその場をあとにした。
「あ、椿くんの追っかけ記者さんだ」
はたり、とあったその人にそう言えば彼女はニコリと笑みを浮かべた。後ろの男性達が苦笑いしているが。いや別に悪い意味ではないのだ。私は荷物を運びながら首を傾げた。
「藤澤さんスカウトになったらどうです? 椿くん最初っから追いかけてるでしょ? めちゃくちゃいい目してるなって思ってたんですよ」
「ありがとうございます。えっと」
「あぁ、アルバイト事務員の苗字です」
「えっ? 事務員、しかもアルバイトだったの?」
「アルバイトですね」
「サッカー上手いんだからユースとかスクールのコーチだと思ってた」
そう告げた男性記者さんに肩をすくめた。
「何か怪我が?」
「どうして?」
「この前、『激しい運動はしてはいけない』と笠野さんに言っていたのを聞いたので……」
「ははは、まるで私の記事を書くみたいですね」
ケラケラ笑いながらそうつげる。彼女が苦笑いしたのをみて、私は首を傾げる。
「どう見えます?」
「えっ?」
「私、何処か悪く見えます?」
「……いいえ、どこも悪くは見えません。元気そうです」
「じゃあそういうことにしといてください」
自嘲にも似た笑みを浮かべてしまったと思う。彼女は多分わけわからない人と思っていると思う。
「ナマエさん、ちょっとだけ広報のこと手伝って――藤澤さん達と話してたの?」
「私が何者かって話をしてました。スクールのコーチだと思われてたみたいで」
「ああ、確かにそれっぽい!」
ケラケラと二人で笑ってから、何か用ですか? と尋ねる。広報手伝って! と言われたので私は手伝いに向かうのであるが。