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 やってきたUAE、少し時差ボケで死んだのだが、景色を見たりして気力を取り戻す。まぁ昼間出歩くのは無理だけれど。やってきた予選会場、後藤さんと入場口で分かれてチケットを見せれば案内された席はめちゃくちゃいい席だ。スタジアムなんか久しぶりなのである。となりに座る人と英語で会話しつつ試合が始まるのを待つ。
 海のような青が入場してくる。その中に彼はいた。大人だなぁ、と、蓮を見た時と同じような感想を抱く。そのまま始まった試合に、私はワクワクしながら試合を見る。やっぱりサッカーをしたいな、だとか、そこに立ちたいなという意識は封じるとしよう。あと多分椿くんが私みたいな人がいると伺っているのが見える。途中で私と勘づいてハナちゃんに私がいることを伝えようとしてくれているようだが、まぁなんだ……呼んだのがその人なんだよな、と私は笑った。当の本人が忘れているか、私が来ないと思っていると思う。
 流石にこの気温の中プレーするのは私には無理だろう。夜はまだ涼しいとはいえ、サッカーを観戦するだけで体力を使うのだ。
 ――不意に彼が足を止めた。こちらを見るように。まぁ、私を見ているかわからないが。しかも最悪、私が私だとわからない可能性もある。でも、目を見開いているあたり私だと理解されているかもしれない。私は手をひらひらと振って、頑張れハナちゃん、と声を出した。きっと届くはずはない言葉だ。それでも彼は少しだけ嬉しそうに笑みを浮かべるとまたボールに向かって走り出した。


 会いたいと言われたがどう会えというのか。そう思いながらスタジアムを眺める。心配して周りに声をかけられたのであるが、少し休憩して帰ると素直にいえば引き下がってくれた。外国であるのであまり一人でいるわけにはいかないし、向こうも一人で会うことなんてできないだろう。いやあれが会ったカウントの可能性はあるな。まぁ元気な生ハナちゃんを見られたしそろそろ帰るか、と立ち上がる。後藤さんと会わなければ、とスマホで連絡を取りつつスタジアムをでれば丁度選手が捌ける時間と重なったらしい。こちらを見た椿くんに私はひらりと手を振る。
「あ、やっぱりナマエさんだ!」
「やほー、椿くん、楽しんでそうで何より」
 私はそう言いながらぐしゃぐしゃと彼の頭を撫でる。うわっ、と声をあげた彼に「ちょっとその位置変わってよー」と冗談めいて告げる。まぁ、周りの視線が痛いからやめるけれど。
「わざわざUAEに来てくれたんですか?」
「まぁね。君の活躍を見つつ、もう一人の通訳もこなしつつ……まぁ、誘われたから来たんだけど、その誘った人と未だ会えてないんだなぁ」
 そんな言葉をこぼしてから二人を見る。
「それにしても椿くんも窪田くんも二人ともいい感じだね! めちゃくちゃ楽しそうじゃん。そのまま試合楽しんでね。いつかは君たちがあの二人と交代するとおもうし」
 二人の頭をわしゃわしゃ撫でて「じゃね」と手を上げる。
「ハナちゃんによろしく言っておいて」
 ハナちゃん? と首をかしげた窪田くんに対し、椿くんが「あっ」みたいな顔をした。私はそのままひらひらと手を振る。バス遅れるよと言えば彼らは駆け出したのだが。ひとつだけ空いているバスの窓に私はまたひらりと手を振った。



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