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 考えて考えた結果である。両親にメッセージを送るか否かを迷った末、先にアメリカにいるドクターにメッセージをおくる。今の仕事を彼は理解しているわけであるし。しばらくすれば、了承のむねと併せて「今何処にいるんだい? まさかUAEに行ってないだろうね?」というメッセージが届いた。なるほどバレている。
 ちなみにあの後城西さんにも久しぶりだな、と言われた。どうやら彼は覚えてくれていたらしい。どうも周りに優等生タイプがいなかったため彼のようなタイプはこそばゆい。とりあえずハナちゃんの後ろから伺いつつ、久しぶりです、蓮がお世話になっています、と返せば彼は目を瞬いた。いや? 俺が世話になっているぞ、と彼は返すのだがそこがまた周りにいないタイプ……以下略である。まぁそんなこんなハナちゃんが城西さんと帰るのを見送り、私は聞き耳を立てていた後藤さん達に合流しようとすれば彼らは解散していたため私は部屋に戻り――今に至る。
 UAEにいまーす、と言えばドクターはだろうと思ったよと返事が来た。そんなメッセージに続いて、君の両親から手術の旨をもう一度娘に説明してほしいと言われてね、と書かれている。

 ――自分の命は自分だけのものだと思いがちだけれど、そうではないんだよ。
 その言葉は日本に帰国したあの時の私には心底理解できなかった言葉だ。自分の命だ。どういう選択をしてもいつ死んでもどう死んでも誰にも迷惑はかからない。でも、今は理解できる言葉である。私は結局周りとともに生きているのだ。私の命は決して私だけのものでなく、周りに少しずつ支えられて成り立っている。なんやかんや仲良くしてくれている蓮であったり、待っていてくれたハナちゃんであったり、両親であったり、ドクター達やクラブハウスの人たちであったり。
「うわー、だいぶ視界が狭かったなぁ」
 スマホをベッドに放り投げて自分もベッドに体を投げ込む。いつかサッカーができたとしても、その先を生きる理由が見つかった気がした。


 日本は結局4位で敗退になった。おそらく調子が上がっていた椿くんが窪田くんの怪我によってガタ落ちしたのだろう。そういうのはよくある話、らしい。らしいというのは私は窪田くん側であるし、蓮もまた窪田くん側なのでなんとも言えやしないが、オリンピック予選で蓮が怪我で退場になった時、ハナちゃんが調子を落としたからである。でも、それは椿くんにはおそらく仕方がないことなのだ。彼はメンタルが強いわけでは決してない。誰かに支えられている状態で手を離されてみると誰もがバランスを崩すように彼もまたバランスを崩しただけだ。彼の失敗ばかりを責める日本のメディアに嫌になる。まぁ書くのはメディアやサポーターの自由だ。私も改めて検索したら色々書かれた記事がヒットして笑った。今回一緒に観戦する鹿島のgmである猪瀬さんがケラケラ笑う私を見下ろす。どうやら彼も私を覚えていたらしい。
「まって、本当に夜逃げ説出来ちゃった婚説多すぎて笑えるんだけど」
「苗字を追いかけてた選手も何人か調子をガタ落ちさせたぞ。うちの女子にいた選手も調子を落としたもんだ」
「いやー、それは申し訳ない。目標でい続けたかったんですけどね。……あの頃の選手ってもうほとんど全員引退してるでしょ?」
「数人だけだな。お前と同時期に入った同い年はベレーザの11番とウチの女子のキーパー加賀ぐらいか。あぁ、当時の監督・稲瀬もまだ監督してるぞ」
「えっ、なに? 11番ってまさか葉実ちゃん? あの子10番にならなかったの? というか稲瀬サン何処にいるんですか? ヴィクトリーにいないから何処にいるかわかんなかったのに」
「ウチにいるぞ」
「鹿島かー! 通りで会わないわけだ!」
「……どうだ? ETUのフロント辞めて鹿島のフロントに来るか? 稲瀬や加賀に会えるぞ」
 そう誘ってきた彼に、私ではなく後藤さんが「えっ!?」と戸惑った声を上げた。驚くだけで後藤さんが止めないので私はひらひらと手を振る。
「いやー、ETUが今季タイトル取ったら一旦アルバイト止めて再手術受けるんで無理です」
「ええっ!?」
「タイトルはおいといて……手術は足か?」
「いや、心臓」
 私はケラケラと笑う。そろそろ韓国・オーストラリア戦が始まるだろう。私はその光景を眺める。
「手術せずにそのまま短い余生を好きなことして過ごそうとしてたんですけどね。色んな人と関わって、やっと視野が広がったのか、いろんなものが見えてきて、もうちょっと足掻いてみようって」
「ならもう一度プロに来たらどうだ? プロテスト受けるか?」
「いやー、それはさすがになー、ETUのスクールのコーチ枠目指すかな」
 ケラケラと笑いながら先ほどから黙っている後藤さんの背中を叩く。
「後藤さんも苗字はウチの事務員だからあげないくらい言ってくださいよ! なに押されてるんですか!」
「いや、初耳だったから、色々」
「あれ? そうでしたっけ?」




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