再会した相手がどうして怯えているかなんて自分でも理解している。自分と逃げたと理解しているこの女は。心の中で何かがどうでもよくなった。久しぶりだね、という言葉を発したアイツは年を重ねた。当たり前だ。同じ年月が流れているのだから。達海監督がやってきて、アイツを連れて行こうとするから。だから、俺は口を開いた。
「へぇ、やっぱり、お前は逃げてたんだな」
 零れ落ちたのはまぎれもなく失望だった。眉間にしわを寄せてアイツを見る。何か弁解があるはずだと心のどこかの幼い俺は告げる。アイツはただ怯えたように口を開く。
「仕方ないよ、あれからフットボールできる状況じゃなかったんだから」
 どういうことだ、と頭の隅では思う。でも、大部分を占めた失望に俺はアイツをあざ笑う。
「はっ、言い訳がましいことで」
「そうだね」
 アイツはそう言って笑った。あの頃の笑顔ではない。無理やり作ったような笑みだ。例えるなら別れ話を切り出した時の相手の顔に似ている。
「失望したでしょ?」
 それだけ言ってアイツは監督の手を引いて逃げていく。俺はその背中を見つめる。当然呼びとめもしない。これが花森ならどうしただろうか。きっと理由を聞くのだろう。だってアイツはあの約束をこじらせている。俺はそうではない。ああ、気分が悪い。腹の虫の居所が悪い。持田、と呼びかけられて気持ちを切り替える。アイツをあざ笑う。ウケる、だなんていいながら笑う。

 ――結局、信じていた花森もバカなのだ。アイツはもうフットボールをやめている。



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