見かけた姿に腹が立つ。だから、「なんだ、まだいたの」なんて告げる。振り返ったアイツは一瞬怯えたような表情を浮かべた。なぜアイツがそんな表情を浮かべるのか。逃げたのはアイツだ。俺たちではない。
「なんで消えたの、お前」
 冷たい声だろう。アイツは息をつめた。少しくらい弁明してほしいところだ。子供ができた、借金があった、理由はどうでもいい。俺達には十年いなくなった理由を知る権利がある。アイツは何か言葉を探すように口を動かすがそれがまともな言葉になることはない。隣にすれ違う。こんなにコイツは弱弱しかったか。なにもかもあのころとは違う。そんなことを認識したくはなかった。
「そんなので出てくるくらいならずっといなくなってた方が良かったんだけど」
 そう言って、ヴィクトリーの待機場へ向かう。
「あのね、蓮」
 後ろから呼びかけられた言葉にもうなにもききたくないのだと口を開く。
「黙れよ、今はお前と話したくない」
 ――バカはきっと俺もだ。何時かはアイツは戻ってくるのだとどうしようもなく信じていたから、現実がこうだから失望を隠せないでいる。

 ――青にいたかった。
 いつかアイツが来るから、花森と一緒にあの青で自分の夢のついでに待たなければならなかった。
 ――でも、アイツはフットボールをやめたのだから、もう。
 夢の中で何度も引き留めた子供は今日で姿を消すだろう。だから、今度は。今度こそは。




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