しばらくして泣き止んだらしい。少し離れたナマエは目をこすって、苦笑いしてみせた。それは何時か付き合っていた女の仕草にも似ている。
「ごめん、めちゃくちゃ泣いちゃった」
「ほんとにな」
 コイツにどうもそういうものは似合わない。あの頃のようなバカみたいな顔はしないだろうか。そう思いながら昔のように頬をつねる。
「お前さー、ホント会った時にすぐ言えよな。というか説明の手紙くらい寄越せばよかっただろ」
「いひゃい」
「……俺たちの勘違い損じゃん」
 言い返す言葉もないのかナマエはただ俺のされるがままだ。それに満足して頬から手を離す。とりあえず、スマホを貸してと告げたれば、ナマエ首を傾げながらスマホを取り出した。なんでロック解除しないんだコイツ。普通は解除するだろ。ロックを解除するように促せば、納得したようにロックを解除したのだが。ロックが解除されたスマホに、メッセージアプリを起動し、自分のアカウントを登録して返す。不思議そうに眺めたナマエはスマホの画面を見てから俺を見上げた。
「これ、蓮のやつ?」
「そう」
 俺の返事にアイツは少し嬉しそうにした。その顔は昔のアイツとなんら変わらない。それがうれしくて吹き出せば、不服そうな顔をした。昔のままだ。きっと、コイツは変わっていない。大人になって再会したのだからもう少し色気があってもいいと思うが、そんなものコイツには不要なのかもしれない。
「……思ったより、変わらないもんだな」
「……きれいになったね、ぐらい言ってくれてもよくない?」
 絶対言わない。死んでもいうか。だから、俺は鼻で笑うのだ。
「誰が。お前は変わってねぇじゃん」
「くっそー、腹立つ。自分は大人になりやがって」
 昔のようにナマエはじゃれるように俺を殴る。痛くもないそれは昔のままだ。懐かしいあの頃のようで、居心地の良いものには変わりなかった。ふはっと笑い声がでる。それを聞いたナマエも笑いだす。久しぶりだというのに、二人でけらけらと笑う。それは間違いなくあの頃の延長線だった。



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