カイリュー、お手紙便(魏)
飛んできた何かに周りは騒然とした。新手の妖魔かと武器を構えた将兵にとは対象的に、翼が生えた奇妙な何か――獣であるにはまちがいない――は友好的であるらしい。にっこりと笑って挨拶をするように片手をあげた。それをみて楽進と李典は武器を少し下げる。敵意はまったく感じられない。
「敵意はない、のでしょうか」
「嫌な予感は特にしないけどな」
そんな話をしている二人をきにせず、がさごそと何かは下げている袋を漁る。何かを探しているらしい。余計に何だ何だと困惑していれば、何かあったのかな? と軍師である郭嘉がやってきた。
何かは人が増えたことに気づいて、にっこりと笑ってまた挨拶と思われる行動をした。やはり、敵意は全くない。驚いたように郭嘉が何かをみていると、のしのしと郭嘉に近づくと鞄から物を差し出した。ふわりと香る匂いは甘いが、どこか上品さがある香りだ。郭嘉がみてみれば、そこには子供の字で公達殿と書かれている。
そこで郭嘉はなるほどと理解した。ここ数ヶ月、荀攸から不思議な生き物を引き連れている子供の報告がごく稀にあがるのだ。確か、名前は。
「貴方はケイファちゃんの使いかな?」
そう尋ねれば何かはにっこり笑って頷いた。なるほどやはり報告通り意思の疎通は可能らしい。
「これを公達殿にわたせばいいんだね?」
郭嘉の問いに何かはまた頷く。そうして自分の仕事が終わったというふうに、郭嘉から離れると空にまた舞い上がった。すぐにその背は空高く舞い上がり見えなくなる。郭嘉がそれを見送っていれば、楽進と李典がやってきた。
「郭嘉殿、あれは……?」
「国境に他の世界の子供がやってきたようでね。荀攸殿がたまに面倒をみていると言う報告は聞いているんだけど、その使いのようだ」
「子供?」
「何でも不思議な獣を連れているとか。あれもそのうちの一匹なんだろう」
郭嘉の言葉に楽進がなるほどと納得した。通りで見たことがない生き物のはずである。
「それは?」
「荀攸殿宛の何からしい」
サラリとそう言って郭嘉は封が閉じられていない封筒を開く。中からでてきた紙を見てみたが、見たことがない文字である。そして香りのもとはこれだ。あの生き物の様子を見るに文字の内容は急ぎではないのだろうが。
「これは私が責任をもって荀攸殿に渡しておこう。あれは悪いものではないと兵に説明しておいてほしいな」
郭嘉の言葉に二人は頷き、また兵たちの訓練に戻る。郭嘉はそれを見てから荀攸のいるだろう場所に足を運んだ。
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