おてがみよんだ!(魏)



 そっと足音を消して背後に忍び寄る。
 懐から先程の手紙を取り出し、気づいているらしい男性達には人差し指をさして黙るように告げる。本来なら驚かせるにはあと数秒だ。しかし、はたとめがあった鳥がその人の手を啄んだことで失敗する。靛、どうかしましたか、と鳥に告げたその人物は翼が示した先――背後を振り返った。まぁ、どちらにしろ近くにあった顔に「うわっ!?」と声を上げて驚くのだが。

「……郭嘉殿」
「おっと、これは中途半端な驚きに変わってしまったかな?」

 とんとんとん、と見慣れない鳥は机を移動すると郭嘉を見上げて不思議そうに首を傾げた。満寵が興味津々という風に机の上にいる鳥に合わせてかがみながら見つめる。

「面白いなぁ。人間の言葉の意味を理解してそうだし、加えて意思の表示もわかりやすい」
「しっかし、何で郭嘉殿には突かないんだ?」

 賈詡はそう言って鳥を見下ろす。鳥はもう敵意がないのか興味が郭嘉に移ったのか仕切りに首を傾げている。

「賈詡は突かれたのかい?」
「公達殿を驚かせて、怒ったようでした。公達殿が止めたのでやめましたが……」
「流石にやり過ぎたので止めましたが、賢明な判断です」

 そう荀攸が鳥の頭を撫でれば、鳥は気持ちよさそうに目を細めた。賈詡はやれやれと肩を竦める。そうしてふと香った香りに郭嘉をみた。

「郭嘉殿、香を変えたか?」
「いや? 先程使いから預かったものの匂いだとは思うけれど」

 郭嘉はそう言って荀攸にきちんと手紙を差し出す。荀攸は首を傾げてそれを受け取り、え、と声を上げた。

「ケイファが来て……?」
「いいや、彼女の使いで見たことがない生き物だけがきていてね。君に渡すように頼まれたんだ」

 そう言った郭嘉に荀攸は頭を抱える。騒ぎが聞こえたような気がしたのは気のせいではなかったらしい。

「もしや、何か?」
「急ぎのようには見えなかったけれど」

 荀攸は公達殿と書かれた封筒をあけ、中の紙を取り出す。その際にふわりと漂った香りに、これか、と賈詡が紙を見る。荀ケもまたそれをみた。

「いい香りがする……紙でしょうか」
「これは模様か?」
「いえ、子供の世界で使われる文字です」
「文字!? 全く見たことがない文字だね!」
「しかし、文字の並びや運用法は倭の国ではなく俺たちと同じようです。……」

 荀攸は手紙の文字を指でなぞると、困った顔をした。

「何と書いてあるのですか?」
「……もうすぐ冬の支度を色々します。子供だけではどうにもならないことがあります。お暇な時でいいのでお手伝いお願いします。お礼はします……」

 その内容に反応は分かれた。驚く人、と笑う人である。思ってもみないお誘いである。

「えっ、もうですか?」
「まだ秋に差し掛かったところなのに? 何かの暗示かな?」

 荀ケと満寵の言葉に荀攸は「いえ」と否定をする。

「ケイファにはケイファなりに毎日仕事のようなことがあるようなので、恐らく今から始めないと間に合わないと思ったのでしょう。暇がある時ということは急ぎではないので、また休みの日に顔を出すとします」

 荀攸はそう言って手紙を横におく。代わりに行ってきてあげようか? と興味本位で告げた郭嘉に荀攸はため息をついた。



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