ふゆのじゅんび(1)



「何事!?」

 聞こえてきた悲鳴と吠える声にケイファは住居としているゲルから飛び出した。ゲンゲロゲー! とケラケラ笑っているゲンガー、尻餅をついている青年、吠えるガーディに、ケイファは理解する。どうやらやってきた人をゲンガーが驚かしたらしい。その奥に見えた魚粛は笑っているが。

「コラー!! ゲンちゃんー!!」

 そうケイファが叱りながら近づけば、ゲンガーは鬼から逃げる子供のように影に溶け込んだ。ケイファは自分達の足元の影をキョロキョロと見渡し、ガーディはすんすんと匂いをかいだ。そうして見つけた一つだけ猫耳のようなものが生えた影。ガーディがその近くに座ったため、ケイファは勢いよくその影を踏んだ。すると今度はゲンガーが驚いたらしい。影からしゅるりと現れるとケイファを見る。ケイファがどうだとばかりケラケラ笑えば、これでもくらえとばかりにケイファの頬をふにっと引っ張った。

「もー! ケイファのほっぺをひっぱるんじゃなーい!」

 ケイファの言葉にゲンガーは建物の影に溶けこむと笑ったようで、ニシシと影に口だけがうかんでまた消えた。ケイファはもー! と言いながら魚粛達をみあげる。

「こんばんは! ギョシュクさん! お兄さんは大丈夫?」
「おお、こんばんは。陸遜は大丈夫だ。ケイファ、今のもぽけもんか? 見たことがないが……」
「そうだよ。ゴーストタイプ……お化け属せーのゲンガー! 昼は寝てて、夜は見張ってくれてるんだけど、今くらいの時間だと悪戯を良くするんだよ。多分、ギョシュク殿ってわかってて驚かしたんだと思う。お兄さんごめんなさい」

 そうケイファが謝れば、座り込んだ青年はいえと首を左右にふった。

「本当に驚きました。彩霞のようなものではなく、あのような生き物もいるんですね」
「彩霞?」
「がーでぃの名を皆でつけてな。朝、日が昇る時に空が赤くなって雲も色づくだろう? そのことだ」
「へぇ、素敵な名前だねー!」

 よかったね、とケイファが頭を撫でれば、ガーディは返事をするようにガゥ! と鳴いた。

「ケイファよ、書状が届いたが何を書いてあるかわからなくてな。確認しにきたんだが」
「あちゃあ……」

 ケイファはそういって頭を抱える。魚粛が一番ケイファの元に来て時間が浅いのだから仕方ないだろう。

「後は明日も休みでな。陸遜とこちらに泊まろうかと思ったんだが……」
「ほんと!?」

 魚粛の言葉にケイファは嬉しそうに二人を見上げる。本当だと頷いた二人に、ケイファはやったー! と喜んだ。



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