きょうのひがくれる


「シゲンさーん、今ね、いいところだから見に来て!」

 ドロバンコ達と木の枝を置きに行っていたケイファがそうかけてきて龐統の背中を押した。馬岱がそれを見て首を傾げる。

「俺たちは行っちゃだめ?」
「虫ポケモンが大丈夫ならいいよ!」
「おや、もう陽が暮れるし今度じゃだめかい?」
「今度じゃ間に合わないよ! メラルバがウルガモスに進化しようとしてるからきて!」

 そう言ってケイファは花畑の方へ龐統の背中を押す。結局は全員で向かうことになるのだが。


 一面に咲く花と夕陽に感嘆のため息をつく、間もなく、ケイファはこっち! と急かすように手招いた。少しハズレの木材置き場に何か五本のツノが生えた幼虫のようなものが一生懸命木の枯れ枝に登っている。月英が淡々と幼虫のようなものを見つめた。

「本当に大きいのですね」
「これがメラルバ?」
「そう! 何処かの地方じゃ、太陽から落っこちてきたって言われてるんだって」

 幼虫――メラルバは枝の途中で止まる。すると、ちり、と火の粉が舞った。そして前足のような黒い場所から火の塊をつくりだし、それは糸のようにメラルバの体にはまとわりつく。

「燃えちゃうけどいいの?」
「大丈夫だよ」

 そうしてそれは繭の形になる。美しい炎の繭だ。陽が随分傾いて、空が赤くなっていく。そうして空が真っ赤になった時、その繭から光がこぼれた。燃え盛る炎の繭から割れるように光が出てくると、それは六枚の羽を広げた。羽を伸ばしたその蝶のようなポケモンとは裏腹に、繭から火がきえていく。そうして赤い火の粉を鱗粉のように撒いて空を飛んだ。
 息を呑むような美しさといったらいいのか、まるで言い伝えに出てきそうな瞬間であった。ひらひらと、赤い空を堪能するように。そうしてケイファの近くにやってくる。

「やったー! メラルバがウルガモスに進化した! おめでとう!」
「ホウ!」

 ケイファがとマルそう言ってぴょんぴょん跳ねれば、ウルガモスは嬉しそうにケイファ達の周りをひらひらと飛ぶと他のポケモン達がいる方に向かった。

「ね! ね! すごいでしょ! メラルバからウルガモスに進化するのって、とっても時間がかかるんだよ! それに、メラルバは蛹? 繭? になるのが一瞬だし、早朝か夕方にしか進化しないからあんまり見れないんだ〜」

 ケイファは興奮を隠さず龐統に告げる。そうして、マルをまたフードの中に入れると「じゃあ日が暮れたから今日はおしまい! ありがとうございました!」と告げる。

「おっ、じゃあ俺たちは帰るか」
「そうですね、とりあえずは基礎や材料は揃ったようですし」

 魚粛と陸遜の言葉にケイファとマルは頭を下げる。

「お手伝い、ありがとうございました! お礼は……うーん、どうしよっかなぁ。何がいい?」
「お礼?」
「手伝ってもらったらお礼はしないと」

 ケイファはそう言ってうーむと首を捻る。魚粛が笑いながら口を開いた。

「別に構わないが、せっかくだからもらっておこう。だが、お礼の内容を決めてなかったのか?」
「何が必要かわかんないから」
「いつもは何を渡してるんですか?」
「大人の人はね、香油とか香水とか薬とか……ウールーちゃんの毛で作ったふわふわな糸とか、ふわふわの布とか虫タイプの糸で織った丈夫な布とか色々かなぁ」
「じゃあ、ぽけもんが欲しい、っていうのはどうだ?」

 悪戯っぽく笑いながら、ケイファの視線に合わせて告げた魚粛の言葉にケイファはさらりといいよ! と告げる。いいのかい? あっさりと、と告げた徐庶にケイファは頷いた。

「飛竜も彩霞も遊べちゃうし……それに、ポケモンバトルもできるからいいと思う!」

 ニシシと悪戯っ子のように笑ったケイファとマルに、彩霞も飛竜も賛成だというふうに鳴き声をあげたりする。

「んー、ポケモンを紹介して回りたいけど、今の時間じゃあ足りないかなぁ」
「それならば、モグリューを連れて行っても?」

 そう尋ねた陸遜に、ケイファはモグリューを見下ろす。嬉しそうに目を輝かせている。これはどう? と聞かなくともわかる。

「うん、いいよー! モグリューとリクソンさんはすっかり仲良しだし! よかったねぇ、モグリュー」

 ケイファがそう言ってモグリューに言えば、モグリューは嬉しそうに片手を上げて鳴いた。

「ギョシュクさんはどうする?」
「そうだなぁ……」
「彩霞の進化に使う石もあるよ。でも、彩霞がおっきくなっちゃうから、そこは考えた方がいいかも」
「それはどれほどだ?」
「ギョシュクさんの身長くらい?」

 そう言えば、各々考えたらしい。大きいですね、と陸遜が魚粛を見ながら告げた。

「うーむ、想像がつかんが、まぁ少し考えてみよう。彩霞やモグリューが食べるきのみをもらって帰るか」
「わかった、とってくる! あ、あと、モグリューのこうげきは彩霞に効果抜群だし、体力回復できるもの多めにしとく!」

 ケイファはそう言って、ゲルの中に戻る。残された面々は攻撃が効果抜群……? と顔を見合わせた。



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