ふえたほごしゃとポケモン



 異民族の住居といわれればそれはそれで納得できる。飾られているもので、近しくも遠い文化であることはなんとなく理解できた。描かれた模様などは何度かみた記憶があるからだ。しかし、そこに存在する文字は魚粛は全く見たことがない。描かれている生き物も見慣れないものばかりである。
 荀攸と徐庶の話を聞いては見たが、この見慣れない生き物達は皆不思議な力を持ち、ケイファと協力して暮らしているらしい。家族のような密接な関係は、馬と人の関係にも似ている。動物達は人の言葉を理解し、ケイファを守ろうとしたり一緒に遊んだりする。
 魏や蜀で面倒をみるかという話は上がったが、見慣れない動物達を連れて行けば大変なことになるだろう。何よりケイファが兄が帰ってくるかもしれないからとこの場所からの移動を拒むのだそうだ。試しに魚粛も畑仕事から帰ってきたケイファに尋ねてみたが、遊びに行くぐらいならいいけど行かないと返されてしまった。
 そんなこんなで恐らく一番初めに出会った荀攸は様子を窺いに仕事が落ち着くと顔を出し、その道中で徐庶と出会い、お互いこの辺りでは戦闘はしないようにしようという話にまとめたという。確かにこんな場所で戦や戦による進軍が行われてしまえば、ケイファや生き物は巻き込まれるだろう。だからこそ魚粛も協力を申し出た。荀攸が言った貴方でよかった、は、話が通じる人がきてもらえてよかった、という意味だろう。
 そんなこんなで話がまとまり、魚粛が見慣れない三匹の生き物が描かれた飾り布を眺めていれば、ケイファがぴょこぴょこやってきて、それはね伝説のポケモンだよ、と告げた。

「伝説の?」
「赤い鳥はね、ファイアーって言って春を連れてくる火の神様。南にある火山の炎の中に住んでる。青い鳥がフリーザーっていう冬を連れてくる氷の神様。北にある一番高い雪山の頂上に住んでる」
「黄色の針みたいな鳥は?」
「針みたいなのは、サンダー。夏を連れてくる雷の神様。東の山につねにある雷雲の中に住んでる。季節と天気は三匹が喧嘩の勝敗で決まるから、長い間の天気を変えて欲しかったらその神様を応援する」
「西は何もないのか?」
「西の方は魂を沈める山があるよ。ポケモンも人間も死んだらみんなそこを通って行くんだって。それが下の絵」

 そう言って指差した先――正しくは掛け軸の下の方には確かに黒と白で描かれた山がある。

「これは?」

 そう言って魚粛がさしたのは大きな布飾りである。一つの緑色の大きな丸を囲うように十七の丸が円状に描かれていて、その丸の中には何か模様が入っている。木の葉といわれたらそうだろう。

「それはねー、ケイファがケイファのいる地方でくさタイプの代表だよって証し」
「くさ……たいぷ?」
「ポケモンには十八のタイプがあるんだよ」
「たいぷ、がわからないな」

 魚粛の言葉にケイファは考える。タイプを言い換えろと言われても難しい。徐庶もビブラーバにはりつかれた状態でやってくると、その布飾りをみた。

「うーん」
「魚粛殿、ケイファの話を聞くに、恐らく我々では宝玉に宿る属性のようなものだと思われます」

 何か書き物をしている荀攸の言葉に魚粛は首を傾げる。

「属性?」
「はい。ぽけもんはなんらかの属性を宿すと思われます。十八もあるとは予想外でしたが……ケイファ、教えてもらっても?」
「そっかぁ。ポケモンいないとわかんないよね。くさ、ほのお、みず、でんき、こおり、じめん、ひこう、むし、いわ、どく、はがね、かくとう、あく、エスパー、ドラゴン、ゴースト、ノーマル、フェアリー」
「よくわからないものがちらほらあるな」
「草、炎、水、えっと?」
「でんきは簡単にいうと雷だよ。雷の力を使うってちっちゃい頃きいた。ビリビリする」
「なるほど。では草は草花、炎は炎、水は水の力を使うということですね」
「うん」
「でんきは雷……地面は大地の力、ひこうは?」
「高い場所まで空が飛べるポケモンはだいたいひこうタイプだよ」
「虫は虫だね、姿でわかりやすい」
「コータツさんは苦手」
「いえ、そういうわけではありませんが、あの大きさがいきなり現れたら普通は驚きます」
「大きいのか」
「一尺ほどの芋虫がいますよ」

 徐庶がそう言ってこれくらいと大きさをしめす。普通は驚く。徐庶のように、これはケムッソちゃん! と見せられれば驚かないが、荀攸の場合上からイトマルが降ってきた経緯がある。

「岩は岩、毒があるものもいるのかい?」
「うん。でも、ポケモンの毒とかはきのみで治るよ。ここにいるポケモンは偉いから、本気で怒らない限り人間に毒で攻撃はしてこないよ」
「はがねは鋼か」
「とてもかたい」
「格闘や悪は人間のようだな」
「外で稽古してるよ。悪はねー、悪いことしちゃう癖があったり、悪い人に悪い事をさせられやすい」
「えすぱー、どらごん、ごーすと、のーまる、ふぇありー、とは?」
「ドラゴンは竜の仲間だよ。ゴーストはお化け!」
「お化けもいるのかい?」
「いるよ。夜になると見張りしてくれてる。エスパーはね、考えてることをあてたり未来を予知したりできるんだって。フェアリーはおっきい爺ちゃん達だと妖精だとか精霊だとか言ってる。ノーマルはね、普通!」
「普通」
「なんの力も宿さないということか?」
「普通の力を宿してるよ!」
「……?」

 普通の力とは? と三人はケイファを見たが、ケイファはどこふく風である。

「昔、ケイファが住んでるところには十八人と十八匹のポケモンが神様の使いとして存在していて、十八の集落でそれぞれ暮らしてたんだけど、その名残なんだってきいた。くさ代表は、はじめてのポケモンわたしたり、腕試しに付き合ったり、薬とかを作ったりする」

 ケイファはケラケラ笑ってそうつげる。

「ふーむ、お前の世界はなかなか興味深いな」

 魚粛がそう言ってワシワシ頭を撫でれば、ケイファは嬉しそうに笑って、その手をとった。

「みんなを紹介するね!」
「ケイファ、ほどほどにしなければ日が暮れてしまいますよ」
 恐らく『みんな』は無理です。

 荀攸の言葉に徐庶は苦笑いをした。確かに、徐庶も紹介してもらったがかなり時間がかかったし、覚えきれているわけではない。時間的にはみんなは恐らくは無理である。


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