二人目の怪盗-13-
「怪盗事件には興味があるが、解決する気ははなはだない」
そう言った父親に私は変な顔をする。さくらちゃんが落ち着くまで二人でしばらく絵画を眺めていれば、快斗くんが「絵画が偽物にすり替えられて、本物から犯行状があった」とやってきたのである。そこで警察に声をかけられた父親が告げた言葉が冒頭のそれだった。美雪ちゃんが不思議そうに声をかける。
「どうしてですか?」
「ゴーストペインターの件で警察との連携と原稿が忙しい」
そういえば、である。この父親は100年前のフランスが好きなのだ。いや、母親の親族が判明したことにより、その親族の都合もあるかもしれないが、それにしても、だ。あの書斎にはホームズなどの名探偵より圧倒的にアルセーヌ・ルパンなどの怪盗に関する研究資料が多いのである。私は呆れたように声を出す。
「……怪盗事件が好きなだけでしょう」
「そうだな。そもそも、娘はそのために呼び出されたんだろう。娘を使え」
そう警察に指示した父親はもう知らないふりだろう。背中を向けた彼に私は問いかける。
「一つだけ聞きますが、怪盗紳士と知り合いですか?」
「何回かあったことはある」
その言葉に私はため息をついた。恐らくは、そういうことだ。飯塚龍一の登場に驚く中、一人だけ違う表情をのぞかせていた人がいるのをみた。あの人も恐らく父親の体質を知っているのだ。父親はそれ以上話すことはないらしく、英語で誰かと話しはじめたが。こうなってしまえば、恐らく本当に手をかさないつもりだろう。まだこの包囲網だ。怪盗紳士はまだ逃げていないだろう。私はさくらちゃんをみる。
「怪盗紳士を利用したお詫びにあげちゃう?」
「うーん、」
「だめだろ、それはさすがに」
はじめちゃんも苦笑いである。
「ちなみにどの絵を?」
「『我が愛しの娘の肖像』がなくなってるんだよ」
その言葉に私はさくらちゃんをみる。何も変わりはない。一瞬彼女が怪盗紳士の変装かと思ったが、違いそうだ。
「でもこの包囲網であんな大きい絵を抱えて逃げれるかな?」
「それはそうよね」
美雪ちゃんが頷いた。私は資料を思い起こす。
「しかも、怪盗紳士が逃げる時って、怪盗キッドみたいに警察を撒いてるし、まだいるんじゃないかなぁ」
「じゃあ、絵はどこかに隠してるかもしれないってこと――」
そう呟いたはじめちゃんと快斗くんが、同時に「あっ」と声を上げる。二人で顔を見合わせる。
「金田一、わかったか?」
「多分だけどな、木を隠すなら――」
――森の中!
二人で同時にそういうあたり、すっかり二人は仲良しらしい。木を隠すなら森の中、ということは、絵画の中に隠したということだろう。
「なるほど、模写のキャンパスに張り替えてるんですね」
「あぁ、たぶんな!」
「さくら、同じサイズの絵は?」
そう尋ねたはじめちゃんに、さくらちゃんは少し考えてから口を開く。
「――それなら、二つあるわ」