誰がために薔薇は咲くー2ー



「ローゼンクロイツ?」

 ヤマトが見せてきたのは何かの紹介状である。中身を見てみれば、青薔薇の展示を行います、と機械で印字された文字が現れた。貴方はそこで異母きょうだいの命を奪われることになる、と書かれている。私は眉間に皺を寄せた。

「あの父親が浮気を……?」
「それは多分ないと思う」

 ヤマトはそう言って間髪入れずに突っ込んだ。わからないじゃないですか、と言いながら手紙を折りたたむ。今更ながら手袋をはめていてよかったと思う。念のために再度チェックしてから手紙をヤマトに返した。

「怪しい手紙に付き合うことはないです」
「でもさー」

 ヤマトはそう言って渋い顔をした。事件に関わりたくないのに事件に関わろうとするのは珍しい。いや、まだ予告で人が殺されていないからだろうか。呼び出しベルが鳴ったのでそちらに向かう。インターホンをみれば快斗くんである。いつものように「よっ」と軽く手をあげた彼にヤマトが「快斗じゃん」とぼやいた。とりあえず彼を中にいれる。

「何してんだよ、快斗」
「久しぶりだな、弟くん。ちょっとアキを借りたくて」
「アキを?」
「そ。弟君も来るか?」

 そう言って快斗くんは見覚えのある封筒を取り出した。私とヤマトはヤマトが持っている封筒をみる。全く同じ種類、全く同じタイプの封筒である。私達の視線に快斗くんも同じくヤマトのもつ封筒を見たのだろう。彼もまた「は?」と声を上げた。

「アキ達のとこにもローゼンクロイツから手紙来てんのか?」
「……まさか快斗くんが異母兄弟?」
「な、わけがないだろ、俺の母さんは馴れ初め語るくらいには父さんにゾッコンだよ。今もな」

 快斗くんはそう言って椅子を引いて座った。夫婦仲が良かった様で何よりである。とりあえず話が長くなりそうだ。快斗くんに何か飲みますか? と尋ねれば適当でいいと言われた。カフェオレベースがあったはずなので、それを使ってカフェオレを作ることにする。ヤマトは快斗くんの手紙をみたいらしい。快斗くんはヤマトに自分の手紙を渡した。机の上に二つの手紙を並べたヤマトは全く同じ文言と呟く。私は二人にカフェオレをおいた。

「で、快斗くんは館に向かうんですか?」
「人違いにしろ生活圏内特定されてんのはちょっとなぁ……」

 そう言って快斗くんは頭の後ろで手を組んだ。私はヤマトの隣に座る。

「生活圏内?」
「家の郵便受けにこれが入ってたんだよ。青薔薇と一緒にな」

 快斗くんの発言に私はヤマトを見下ろす。ヤマトは端の方に置いた箱を私に渡す。開けてみれば確かに青い薔薇が入っていた。

「……ヤマトはどこでこれを?」
「郵便受けに入ってた」

 なるほど、確かに生活圏内を特定されている。異母兄弟を殺すからと言って、差出人であるローゼンクロイツが家に乗り込んでくる可能性もあれば、私やヤマトに危害を加える可能性が確かにあるのだ。快斗くんの場合、幼馴染みの青子ちゃんに危害が及ぶ可能性があるからだろう。

「確かに、これは行くしかありませんね」
「だろ?」
「でもなんで俺たち宛に来たんだ?」

 ヤマトはそう言って封筒をみる。宛先はそれぞれ、私とヤマトの連名と快斗くんのフルネームである。私と快斗くんだけなら奇術師繋がりなどということはあり得るのだが、そこにヤマトが加わると理解が遠のく。

「何か見えないつながりがある……? 国際マジックショーの写真とかですかね」
「あの写真には弟君がいないだろ?」

 そう言って三人で考えてはみるが現状答えは不明である。

「……まぁとりあえず行くしかなさそうなので向かいましょうか」

 私はもう一度文言をみた。まだ期間は先ではあるが。