いつかの女の子と魔法使い見習の話
「貴方は魔法使い?」
青い目をした女の子は青い目をした青年の耳に口を寄せると小さくといかけた。
青年はその言葉に目を瞬いて、彼女を見下ろす。青年の様子に彼女は小首を傾げた。
女の子はどうやら迷子らしい。鳩を追ってきたのだ青年に告げたご機嫌な女の子の手の中には鳩が確かにいたが――音に反応して飛び去った。そこで女の子は自分の置かれている状況を理解した。ご機嫌な笑顔を浮かべていたのに、だんだんと泣きそうになっていく。困った青年はこの子に簡単なマジックを見せた。本当に初歩的なマジックである。コインを消して、花にするというだけの。
「貴方は魔法使いじゃないの?」
再度尋ねた女の子の言葉に青年は少し黙ってから、そうだよ、と言葉を返す。女の子はその言葉に目を輝かせた。青年はその言葉に苦笑いをした。
「でも、周りの人に、秘密にしてくれるかな? 僕の魔法はまだへたっぴで――人を喜ばせるのは苦手なんだ」
「どうして?」
女の子は首を傾げた。青年は困った顔をする。それを見て女の子は少し考えこんだようだったが、すぐにパッと明るい表情を浮かべた。
「もしかして、魔法使いの見習いさんなの?」
「まぁ……そうなるかな」
「じゃあ、貴方はもっと魔法が上手くなる?」
「……どうだろうね」
とぼけるように青年がそう言えば、女の子はさらに目を輝かせた。そうして、口を開く。
「じゃあ、また魔法を見せて。お兄さんだけが使える、魔法をみせて」
そう告げた女の子は、父親に名を呼ばれて青年のもとから離れてかけていく。青年はその背中を見送って、少しだけ上機嫌にコインをポケットにしまった。