奇術師たちは嘘をつく―6―





「アキ姉ちゃん」
「アキ、どうかしたか?」

 ベルくんに連れられてやってきたヤマトとコナンくんに、私は快斗くんの舞台から二人に視線を移す。

「番組を楽しみにしてたヤマトには悪いんだけど、今からはじめちゃんに合流してもらえるかな?」

 そう言えば二人はエッと声を出した。見るからに顔を顰めたヤマトに対し、コナンくんが不思議そうに首を傾げた。

「はじめにいちゃんに?」
「うん」
「何かあったのか?」

 首を傾げたヤマトに私は二人に合わせて屈む。ベル君の耳を塞いでしまったのは仕方ない。

「4番と8番の方が遺体で発見されました」

小声で、かつ、はっきりとそう告げれば、コナンくんとヤマトはエッと声を上げた。

「そうなると、姫宮さんのものが事故なのか故意による事故、もしくは他なのか判別がつきません」
「え、でも……」

 成功していた、と言おうとした彼らに、私は静かに首を左右にふった。

「そう見せかけるのは私たちにとってはたやすいこと。視聴者や観客席にいるほとんどが理解しないほうがいいことです」

 コナン君の目つきが変わる。事件だと理解したからだろうか。ヤマトは私の説明に「それはそう」と納得した。

「貴方達は彼女にまつわることのことを理解していますし……これが連続性があるのかいなかによって、番組を止める云々の話は変わります。だからこそ、はじめちゃんと情報交換してほしいの」

 眉尻をさげてそう言いつつ、ベル君から手を放す。そうして地図を差し出せばコナンくんは頷いた。

「私はここを動けないし……それとなくみんなを見てるから」
「わかった。アキ姉ちゃんも気をつけてね。行こう、ヤマト」

 コナンくんの言葉にヤマトは深いため息をつくと、わかったよ! と言った。そうして、私ではなく、近くにいたベルくんに、悪いけどアキを頼んだ、と言って二人でかけていった。……おっと。私は困ったようにベルくんを見下ろす。彼は同じく私を見上げる。

「……まるでお姉さんは探偵みたいですね」
「聞こえてました?」
「すこしだけ」
「うーん、私は探偵とは違いますね。どちらかというと……いえ。探偵というのはあの眼鏡の少年みたいな人を言います」

 私は困ったように笑う。女性のスタッフさんが私を見下ろした。

「あの、ルージュさん、何かありましたか?」
「あなたは、朝の……」

 ベルくんが私からスタッフに視線を移す。幡山と書かれたスタッフ証をつけた彼女に、私は思い起こす。確か、彼女は朝に変なメールが来たと言っていた。

「いえ、今知り合いが警察といるみたいで、放映をみて心配になって電話をかけてくれました」

 私はそう言って困った顔をする。

「ちょっと気になっていたんですが、朝の……変なメールとはなんだったんですか?」

 私の問いかけに、彼女は少し眉間に皺をよせ、私に耳を近づけた。

「それが、四の次は八、魔女裁判は一旦終わり! っていう悪戯みたいなメールなんです」

 彼女の言葉に、私は彼女をみた。

「もう一つ、番号は書いてない?」
「二つだけです。だから、有本さんは子供の悪戯か――番組の嫌がらせだろうって」

 困ったような顔をした彼女に、私もまた心配そうな困った表情を浮かべる。

「どうか、悪戯であってほしいですね」
「本当に……」

 さて、ここまで条件が揃ってしまうと、おそらくはメールは悪戯ではないし、あれは事故ではなく故意が絡んだものだ。まぁ、姫宮さんの周りは結構色々な感情が渦巻いている。それにしても、魔女裁判、とは言い当て妙だ。姫宮さんは魔女裁判にかけられた人間のように火あぶりにされたわけだし。

「お姉さん?」
「……いえ、本番前なのに少し疲れました」
「大丈夫ですか?」

 そう心配そうに見上げた彼に合わせてかがみ、いつかの高遠さんのように何もないところから花を取り出す。

「大丈夫です、心配ありがとう」

 そういって少し笑って花を渡す。彼はそれを受け取ると、少し表情を緩めた。
 ――拍手の音が聞こえる。舞台の方を見れば、快斗くんが拍手をうけて再度一礼してみせていた。