魔女裁判殺人事件−7−
『どうも、お迎えありがとう、僕だけの天使。仕方ないから、父さんはおいていくよ。民衆が罪を裁いてくれると信じてね』
彼は笑う。どこか安らかに。そして、コインを喰む――瞬間だ。トランプのカードがとんでくると、カードはコインをかすめて彼の手からコインを落とす。アキ! と呼ばれた声にハッとして私は彼がコインを拾うより先にコインを薔薇の花に擦り変えた。そうしてコインを拾おうとした彼を見上げる。どうして、とかすかに動いた口に私は困った顔をして見上げた。
「天使が人を殺すわけない……だなんて、あなたがいった言葉でしょう」
彼がここで死ぬのはいただけない。彼の手を取って、昔の私を意識する。
「あなたの恨みも理解できます。あなたの心境も。よく耐えていらっしゃいます。きっと、何度も耐え、我慢の限界だったでしょう。彼を殺せば自分は自由になれる、と、思ってしまったのかもしれませんね。私はそれを止めて――あなたが死ぬのも止めてしまった」
できるだけ慈しむようにそう告げる。でも、あなたが死ぬのは今じゃない。私はそう言って彼に告げる。
「あなたが撒いた種の顛末を見届けてからでも遅くはないでしょう?」
そう小さく彼に聞こえるようにだけ告げて、私は笑った。彼は恐らく死ぬ。実行したのが彼なのであれば、最低でも無期懲役か何かだろう。海外での余罪が追及されて、刑が重くなる可能性はある。
――が、それよりも。
「Surely, God and the messenger of hell are watching everything he does.(神様も地獄の使いもきっとすべてを見ていますから)」
そう言って彼を立たせる。そうしてぱっと手を放し、ほかの人にも聞こえる声で告げた。
「今はおとなしくあなたが言う民衆が罪を解き明かしてくれることを信じて任せてみては?」
私はそう言って彼が私のポケットに入れたものを取り出し――彼に渡す。おそらくは彼の手帳だろうか。彼は小さくそうするよ、とつげた。
「――君の言うとおりにするよ、青い目の天使」
私は手をたたく。
「さて、幕を下ろしてから連れて行ってもらわないと、せっかくここまで観客をだましたのだから最後までだまし切ってしまいましょうか。事件などおこってないのだと安心させるために」
そういって明智警視を見れば彼はため息をついた。
「彼は連れていきますが――そうですね。ほかの方はそうするべきでしょう。まあ、警察は待機させますが……」
明智警視が高遠さんのふりをした快斗くん、ではなく、快斗君のふりをした高遠さんを見てそう告げる。おっと、どうやら彼には分かってしまったらしい。しばらくすれば人がやってくる。まあ、ヨハンさんは見るからに体調を崩していたので――まあ、精神的なものだろう――警察に連れていかれた。